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異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
ハルシャ公爵領のライズにて

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新しい日常

次の日


「初めまして、これからカイ様の家庭教師をさせていただきます、カーティスと申します。」


そう言って目の前の男はお辞儀した。



どうしてこうなったか?


それは10分前程前に遡る



「学院の授業についていけるよう、家庭教師を雇ったから上手く使うといい。直近の授業は10分後だ。」


10分後って…昨日言う暇あったじゃん…


「…いつ雇ったの?」


そう呆れて聞かずにはいられない。


「カイがアルクィンを離れたすぐ後にフィールが君達がこっちに向かっているって教えてくれてな。遅くならないようにすぐに雇ったんだ。」


それ、僕が拒否していたらどうしてたんだろうか?


「どんな先生なの?」


今まで生徒を“人”と見ないセンセイばかりに当たってきた。彼らにとって“子ども”とは対等な存在ではなく、自分たちの下にいる者として見下し都合の悪い存在は切り捨てられた。


もちろん僕も教師という存在が全てそういう人間だとは思っていない。中にはいい人もいるだろう。


だから今度こそハズレは引きたくない。


「平民だが学院では首席で卒業するぐらいに優秀な人間だ。ただ、彼の教えについていける人間はあまりいないが…」


そんなに厳しいのだろうか?とゆうか、まだ会ってもいない時に何の根拠があって僕ならいけると思ったのだろうか?


「じゃあそれ、僕も無理じゃない?」



「いや、問題ないだろう。だってカイはエステラ家の血を受け継いでいるのだから。」


「エステラ家?」


「ああ。エステラ家は代々頭脳明晰な家系でね。我が愛しの妻がエステラ家の令嬢で、フィオレーナはハルシャ家よりもエステラ家の血の方が強く出ていたんだ。だから、フィオレーナから生まれたカイは人よりも頭がいい可能性が凄く高い。」


知能は遺伝だけによって決まるわけではない。周りの環境や努力でかなり左右される不確かなものだ。


だからあまり納得はいかなかったのだが時間もないので話を切り上げて部屋を出た。


…犯人はお祖父様だったようだ。








「今日の授業は貴族についてです。明日テストしますのでよく聞いておいてくださいね。」


初の授業の次の日にテストって…どんなけ鬼畜なんだよ。日本の進学校でもまあ聞かない、と思ったが取りあえず


「はーい」


と気のない返事をしつつも教師の言葉に耳を傾ける。



「シェナード王国の王族は国王のレオン・エスペラード様と皇后様のエレナ・エスペラード様、そして皇太子殿下のノエル・エスペラード様でございます。これだけは何をおいても覚えておいてくださいね。

また、我が国には上から順番に言うと王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という順番で階級が決まっております。

公爵家は、脅威的な身体能力を有するハルシャ家、治癒術において右の出るものがいないロゼリア家、圧倒的な魔力量を誇るヘリオス家、巨大な商会を持つ知力に優れたエステラ家の4つあります。

また、侯爵家は8つあり最近勢力を拡大しているのがクロード家です。そして、伯爵家は10つありその全てが国境を守る大事な役割を果たしています。その他子爵家は十数個、男爵家は数十個ありますが、公爵家様のお孫様であるカイ様は覚えなくて結構です。」



「それはどうして?」



「原則、身分の低い者から話しかけることが出来ませんし、公爵家の令息は伯爵家の当主と同等の地位でありますので。

…それではまず公爵家の説明に入ります。カイ様はハルシャ家であらせられますのでそちらの説明からしましょう。…ハルシャ家はシェナード王国建国時からの忠臣で当主は初代国王の親友だったとされており、そのため公爵の中では一番権力を持っています。また、ここライズを拠点とし各地に9個領土を治めていて、特産品は主に………」











「ご質問はございませんか?」


最後らへん眠くて死ぬかと思った…


「質問はないけど聞きたいことがある。不敬罪について教えてくれる?」


返答によってはこれからの僕の振る舞い方に影響がでる。


「…かしこまりました。不敬罪とは平民が貴族を侮辱したり身体に接触した場合に問われる罪のことです。場合によりますが公爵家の者に不敬罪と言われますとほとんどの場合極刑となります。

しかし、ライズにおいては公爵様が不敬罪という罪状を無くしましたので存在いたしません。民衆も公爵様が街にやって来ると友達のように話しかけるらしいですがこれを普通と思わないように。…法律に関してより知りたいのであればシェナード王国法大全を差し上げますからそれをお読みになった方がよろしいでしょう。」


と言ってめちゃくちゃ分厚い本を渡された。


「わかった、そうするよ。これで授業は終わりだよね?」



「ええ。」



「それじゃあ失礼させてもらうよ。」


そう言って部屋を出てコウ達を探す。

といっても周りの人に聞くだけだけど…


この人、聞きやすそうだな…


「ねぇ、コウ達はどこにいるの?」



「今は訓練所にいらっしゃいますよ。」


そう言ってふわりと上品に微笑む。人選は間違ってなかったわけだ。


「訓練所ね、ありがとう」


そう言って早歩きで訓練所に向かう。昨日の夜にこの家の構造を覚えてたから迷うこともない。


訓練所は外にあるため遠くから彼らがいることがわかったので少し小走りに近づいた。

















in執務室


「あれはヤバイな。」


そう呟くハルシャ家の当主。


「何のことです?」


とハルシャ家の執事長が不思議そうに聞く。


「カイのことだ。何があったかは知らないが大人を一切信じていない眼をしていた。自分よりも身分が高く社会的に強い相手と分かれば反抗せず従順にみせるが、警戒は一切とかない。自分の立場と相手の立場が反対になるよう隙あらば相手の弱みを探す。

あれを人間不信っていうのだろうな。極めつけには死ぬことに何らたいして感情を持っていないのが一番良くない。あの歳で熟練の暗殺者のような眼が出来るなんて世も末だな。それに一緒にいた彼らに凄く依存している。」


そう言って当主はカーティスが提出したカイの分析資料から目を離した。


カーティスが家庭教師だけでなく精神分析家であることを知っている者は一部のため専属執事ですらしらないことだった。


「依存、ですか?」



「ああ。1ヶ月後に学院へ行くことで彼らへの依存を無くし精神的に成長しなければならないだろう。まっ、本人も気づいているのだろうが…手遅れになる前に見つけることができて本当に良かった」



「どうしてわかるのですか?」



「俺はあの子の祖父だぞ?それぐらいわかる。」


そう言ってハルシャ家の当主は悲しげに微笑んだ。

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