悪夢の始まり
「どうしてお前はそんな眼で生まれてしまったんだ…」
そう言って俺が5歳の時に父親は自殺した。ちなみに母親は俺が生まれた時に俺の眼を見て発狂し、精神がおかしなって俺が1歳になる前に自殺した。
俺が居らんかったら、俺が赤い瞳を持っとらんかったら幸せに暮らせたんかもしれへん。でも、そんなことを思ったとしても現実は変わらへん。
思わずハァーっと川を見てため息ついた。
「コウ、ため息をついたら幸せが逃げるって言っただろう?そんなに難しい顔をしてどうしたんだい?」
すると隣にいる兄さんが話しかけてきた。兄さんは俺と10歳離れており、今はもう立派な大人や。でも、俺の家族やからって兄さんは村の人らから酷いことをされているんを俺は知ってる。
「……なぁ、兄さん、今幸せ?」
俺がそう聞くと兄さんは頬を緩ませながら頷いた。
「もちろん。コウと一緒にいれたらどんなに辛くてもそれは幸せと言えるからね。」
そんなことを平然と言える兄さんは天使かなにかなのかもしれない。
「でもっ、でも、俺のせいで父さんも母さんも死んでんで?それに、兄さんは村の人から仲間はずれにされてるし…」
つむぐ言葉はどんどん小さくなっていく。
「前にも言ったろう?あれはコウのせいじゃないし赤眼のせいでもない。おかしな宗教を流行らせた人のせいだよ。僕はコウの眼、とても好きだよ。ルビーのように綺麗なんだ、絶対に悪魔じゃないと言いきれる。それに、人間から悪魔が生まれる訳がないじゃないか。もし父さんか母さんが悪魔だったとしたら、コウだけじゃなく僕も悪魔になる。コウは僕が悪魔だと思うかい?」
「兄さんが悪魔な訳ないやん!兄さんみたいな優しい人が悪魔なんやったら世の中悪魔だらけやで?天と地がひっくり返ってもありえへんわ!」
「ふっ、そう言ってくれると嬉しいよ。…コウ、覚えておいてくれ。もし、もしも、僕が死んだらこんな村は捨てて違う国に行きなさい。」
と言って、兄さんはまるでもうすぐ死んでしまうのが分かっているかのように悲しげな表情で俺の頭を撫でた。
「っ…そんなん言わんといてや!兄さんが死ぬわけないやん。そんなこと、、あったらアカン!俺が、俺が守ったるから!今はそんな力ないけど、毎日剣術の訓練してんねんで、きっと、守って見せるから…」
その日俺は自分の無力さに痛感して一晩中泣いてしまった。
次の日から俺は必死に体力づくりや剣術、体術を頑張った。兄さんにも教えてもらいながら血のにじむような努力をした。それでも一向に兄さんを越えられる気はしなかった。
「…兄さん、何してるん?」
「うん?久しぶりに料理をしようと思ってね。いつもコウに任せきりだろ?誕生日くらい僕に作らせてくれ」
兄さんが料理をする方が誕生日を台無しにする気がする…
「兄さん、それ、もしかして味見した?」
と少し欠けているキノコを指差した。
「うん、美味しかったよ。」
マジか…
「それ、毒キノコやで?」
すると、兄さんの顔を青くなった。
「えっ本当に?食べちゃったんだけど、どうしよう…」
あわてふためいている兄さんが持っているフライパンの中は焦げていて控えめにいっても美味しくなさそうなハンバーグが入っていた。
「やっぱり兄さんには任せられへんわ。俺がやるから向こうおって」
兄さんはたびたび料理を作っては爆発させる。台所にいれてはいけない危険人物なのである。
すごすごと部屋に戻る兄さんを見て少し申し訳なく思うが、そのまま料理を作ることにした。




