ある日記の1ページ
水の月 23日
僕の名前はルアン。今日から日記、と言うよりも記録を書こうと思う、続くかわからないけど…
突然だが僕には赤い瞳を持つ弟がいる。
でも、僕らは兄弟だが言葉づかいが全くと言っていいほど違う。それは、弟が違う国から来たシャーシャと言う老婆と仲が良かったからだ。西の方言だと言っていたがそれがうつったのだろう、いつの間にか習得していたらしい。
自慢になってしまうが僕の弟はとても聡い。一度見たものは絶対に忘れないし剣の腕だって悪くない。僕に友人と呼べる存在がいたならば、毎日自慢していただろう。
本当は弟を連れてこんな村から出ていきたいのだが、できない理由があった。
なぜだかわからないが、赤眼の者は忌むべき存在だとしているのに赤眼の者が生まれたら10歳まで育てて国に引き渡さなければならないのだ。間接的にでも殺せばその村は祟られる、そういう言い伝えがあったので皆喜々として引き渡す。
何より赤眼の者を引き渡せば国から大量のお金が貰えるそうだ。もしここから逃げれたとしても村中の者が追いかけてくるだろう。そうでなくても幼い子供が森の中で生き残れる確率は0に等しい。でも0ではない。それならば10歳になる直前までに弟を強くして少しでも確率をあげた方がいいだろう。
まあ、そんな計画がバレたら僕は殺されてしまうだろうけど…
そもそも僕が一緒に逃げれたらいいのだが、僕には呪いがかかっており村の外には出られない。無理に出ようとすればどうなるかは分からない。結局、自分がかわいいのだろう。兄失格だろう。
話は変わるがこの村以外で赤眼の者に対する国からの介入は聞いたことがないため、もしかしたらこの村に遺伝関係なく生まれる赤眼の人についての秘密が隠されているのかもしれない。
そう思って僕は調べてみることにした。
土の月 17日
大変だ。まさかこの村にあんな秘密があるなんて…
このままだと弟は遅かれ早かれ殺されてしまう。なんとしても弟だけは逃がさないと。
光の月 3日
捕まった。今、こっそり牢屋の中で書いている。おそらく近い内に処刑されるだろう。弟がこの日記を見ていることにかけて最後の言葉をここに書く。
お前に何も言わずに死んでしまうことを心苦しく思う。でも、時が来てお前に命をかけても守りたいものができたらきっと理解できるだろう。
赤い瞳は悪魔の象徴なんかじゃなかった。今はそれだけしか言えないが許してくれ。
本当に愛してる。
兄より
そう書いて青年はハァーっと息をはいた。青年の指は血で濡れており体も傷だらけだった。
牢屋の外には雪が積もっており窓から氷の結晶が少しだけ入ってきた。青年は震える手で自分の血を使い何かの模様を描いた。
「我が召喚に応じよ、サニー」
青年がそう告げると1匹のネズミの形をした魔物が謎めいた模様の中からそっと出てきた。
「これを時が来たらコウに渡してくれないかい?」
そう告げると魔物は悲しそうな顔をして手に持っていた古びた本を魔法で消した。
「ありがとう」
青年はもう目の前にいない相棒にそう告げて鉄格子ごしに見える赤い月を眺めてそっと息を吐いた。
明日には無くなるであろう自分の命の灯火よりも村から消えていく1人の少年の今後に想いを馳せながら、鉄の香る夜空を恨めしげに睨み付けるのだった。




