表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
断翼のレクイエム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
398/409

夏の天使、イフリート

その頃、コウとイリアスは、街の中心部へと走っていた。


「コウ!!なんかここ、暑くないか?」


もわんとした空気が2人を包み込み、それはまるで真夏の昼のようだった。


「さっきは冷たかったのになんで急に…」


その時、崩れた家の影から誰かが顔を出した。


真っ黒の髪に赤黒く濁った瞳をもち、口元を歪ませた青年だった。


「あれぇ?なんでこんなところに*#%#がいるんだ?ちょうどいい、俺が殺してやるよ!」


声を発する暇もなく、青年がイリアスに襲い掛かる。


「…っ、イリアス!!」


ドンっとコウがイリアスを突き飛ばし、男の拳をもろに喰らう。


そのまま後ろに吹き飛び、コウは瓦礫に衝突した。


「グハっ…」


「コウ!!」


イリアスが遠隔で回復魔法を唱え、コウのケガはみるみるうちに治っていた。


「やはり、先に仕留めるべきはお前だな!!」


青年がイリアスに向かって拳を振るう。


「させるわけ、ないやろ!!」


コウが炎魔法を青年に向かって放つものの、青年は気にすることなく赤く燃え上がる炎に突っ込んで、イリアスを殺そうとした。


しかし、炎に体が入ったその瞬間、青年の体は酷い激痛に襲われた。


「っ…なんだこれは!!」


青年は自分にまとわりつく『黒い』炎を消そうと腕をぶんぶん振り回すが、一向に消える気配はなく、枯れ木のように腕が壊死していった。


「くそがっ!!」


そう言って、青年は腕を引きちぎった。


グショッという音が鳴り、体から引き離された腕は一瞬のうちに灰と化し、新たな腕が青年の体に生えた。


「なんやそれ…不死身やん…」


「コウ!諦めるな!!さっきの腕を見ただろう?コウの炎で首なにかを切り取れば、殺せるかもしれない!」


戦意が消失したコウをなんとか励まそうと、イリアスが声をあげる。


「ウィン!」


イリアスが叫ぶと、小さな鳥の姿をした風の精霊が現れた。


『ピィッ!』


ウィンは勢いよく飛び出したものの、青年の姿を見た瞬間に羽を震わせてイリアスの肩へ隠れた。


「……ウィン?」


イリアスが目を見開く。


今まで見たことがない反応だった。


青年はそんな様子を見て口元を歪める。


「ほう。」


その体から黒い靄が溢れ出した。


ウィンはさらに体を縮こまらせる。


「精霊が怯えてる……?」


コウが思わず呟く。


精霊が怯えるなんてこれまで一度もなかったのだ。

しかし、ウィンのその姿は誰がどう見ても怯えていた。


「リン!」


イリアスがそう名前を呼ぶと、緑色の光と共に草の中級精霊リンが現れた。


リンは青年を見るなり眉をひそめるような仕草をした。


「リン、どうにかしてあの男を抑えられるか?」


こくんと頷き、リンは両手を前へ伸ばす。


地面が揺れ、瓦礫の隙間から無数の蔦が飛び出した。


そしてそれは、青年へと襲い掛かる。


「なにっ!?」


青年の両足に蔦が絡みつく。


腕も、首も、胴体も。がんじがらめにされ、青年はイラついたような顔をした。


「チッ、面倒だな。」


「今だコウ!!」


「おん!」


コウが地面を蹴った。

剣に炎を纏わせて、狙うは男の首一つ。


一直線に青年へ迫り、その首に刃を向けようとした。


しかし、


ブチブチブチッ!!


蔦が強引に引きちぎられて、青年はひょいとコウの剣を左に避けた。


「甘い。」


振るわれた拳を剣で受け止めることは叶わず、コウの腹に衝撃が走った。


ドゴォッ!!


衝撃で吹き飛ばされ、コウはまたもや瓦礫に衝突する。


「ぐっ……!」


うめき声をあげるコウを守るため、イリアスはコウの前に躍り出て、三体目の精霊を呼び出した。


「アクア!」


アザラシの姿をした水の精霊が飛び出して、イリアスを守るようにふよふよと空中に浮いていた。


アクアはウィンのように怯えていたものの、イリアスを守る意志は消えていなかった。


「きゅいーん!!」


アクアの姿がアザラシから変わり、人型へと変化する。


「へぇー、下級から中級へと上がったか…。まっ、どちらにせよ俺には勝てねぇがな。」


「それはどうだろうか?こっちにもまだ使ってない手札が残ってる。アクア、頼んだ。」


アクアはリン同様手をかざし、水を創造した。


総勢数百の水球が青年に向かって襲い掛かる。


「なんだぁ、あれは?」


青年はどこか嫌そうな顔をして水球を避け続ける。水には『一切』触れようとしないその姿を見て、アクアはどんどん水球の速度を速くした。


そして、


バシャァァッ!!


ついに、水球が青年の顔面へ叩きつけられるときがきた。


「っ!」


視界が塞がれたその一瞬、


だがそれで十分だった。


「コウ!!」


「分かってる!!」


コウが再び走りだす。


炎を纏った剣が唸りを上げる。


その時。


青年は濡れた顔を拭いながら笑った。


「俺を、本気で怒らせたなぁ?」


空気が震撼し、熱気がコウの体を直撃する。溶けてしまいそうなほど熱い突風が吹き、コウは飛ばされないように剣を地面に突き刺した。


「神技、炎舞」


その瞬間。


空気が変わった。


青年の殺気が一気に膨れ上がる。


ウィンが悲鳴を上げるように飛び回り、


アクアはイリアスを守るようにピッタリとくっついた、


リンは反射的にコウの前へ出る。


まるで三体の精霊が本能で危険を察知したかのように。


青年はそんな精霊たちを見て嗤った。


「たかが精霊ごときが、俺に勝てるわけがないだろう。夏の天使イフリート様になぁ!」


青年はそう言って口を歪ませたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ