表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~  作者: 存在証明
断翼のレクイエム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
393/411

天使の涙

「…あのさ、今どういう状況?」


真っ赤な剣に貫かれた僕の体は燃え上がっていた。その傍らにコウが立っており、赤い瞳が僕を映していた。


「うん?起きたんか?アイツはどっか行ったで。」


「アイツって?」


「覚えてへんの?カイを背後から襲った卑怯者のことやで。」 


コウがそこまで乱暴な言葉を使うなんて、よほどのことがあったんだろう。


「あーそんなこともあったね、」


「なんやそれ…」


呆れたように僕を見下ろすコウに僕は少し笑った。


意味のない冗談を信じてるくれる人なんて、コウぐらいだろう。


「気を失ってる間、君と高校に行ってたことが衝撃すぎて忘れてたよ。」


「えぇ…まあええわ。それで、起きれそうか?」


「この剣を引き抜いてくれたらね。」


「たぶんそのうち消えるで。実体はもうなくなったし。」


実体?そういえばこれ、似てるけどコウの剣じゃないな…


手を伸ばして掴んでみると、それは光の粒子となって消えていった。


「いつのまにこんなことできるようになったの?」


「ちょっと前からやな。俺のこの力は『邪なるもの』を浄化する力があるらしい。」


そういえば、前にも『炎』で邪なるものを燃やしてたっけ?


「それって使用限界はあるの?」


「今のところなさそうやで。なんなら使えば使うほど力が強なっていってるような気がする。」


「分かった。それならコウは逃げていった敵を追いかけて仕留めてくれる?どうやら、僕とは相性が悪いみたいだから。」


「了解。でも、この子たちはどうするん?」


「それは…」


そう言いかけたとき、ワフンっとルーンの鳴き声がした。


「いいところに来たね。ルーン、この子たちを屋敷にいる騎士たちのところまで送ってくれる?その後合流しよう。」


わかっタ


「君たち、ルーンから離れてはいけないよ。」


「この狼は味方なの?」


「うん。この子は僕の相棒なんだ。君たちを避難場所まで連れて行ってくれるからね。…コウ、僕はそろそろ行くよ。」


そう言って僕は水魔法を使い、軽く血を流した。


「分かった。カイはどうすんの?」


「不穏な気配を3つ見つけた。『あの時』と一緒だよ。…おそらく、堕落させられた天使がいる。彼らと決着をつけてくるよ。これは僕にしかできないからね。」


僕はそう言って窓から外に出た。


ポツポツと降ってきて雨水が僕の頬に当たっては落ちた。


本能的に分かった。


悲しい


辛い


許せない


そんな天使たちの想いが天から零れ落ちた涙だと。


『索敵』を使わずとも分かる『人ならざる者』の気配。

その方向へ、僕は全力で向かった。


移動している間に、コウが知らない子どもからもらったという手紙を開ける。


『僕は冬を司る天使、フィオーラ。どうか、僕を最初に殺してほしい。そうすれば、君が忘れた【あの夢】も思い出せるはずだよ。僕を殺す方法はただ一つ。『神力』を使って首を切ること。『春』のように簡単にはいかないだろう。でも、僕は君を信じている。』


これは…罠だろうか?それとも…


悩んでいる暇はない。一刻も早く『冬』を殺さなければ…


そのとき、ちくりと肌を刺すような冷気を感じた。


「…っ近い」


物影に隠れ、周囲の様子を確認した。


住民のほとんどが、AAランクパーティーの『疾風の緑狼』の誰かによって助けられたのだろう。


やはり格が違うな…おかげで守らなければならない人がいない。


「冬の天使なら、水か氷を使うはず…僕とは相性が悪いな。」


そう呟いたとき、少し離れたところから、何かが聞こえた。


少し離れたところから、何かが聞こえた。


歌声だった。


か細く、今にも消えてしまいそうな声。


それは、どこかとてつもなく懐かしかった。


子守唄にも聞こえるその音色はどこか胸を締め付けるような悲しさがあった。


「……あっちか。」


僕は呼吸を整えながら音のする方へ向かう。


路地を一つ。


さらに曲がる。


進むにつれて気温がどんどん下がっていった。


石畳には薄く霜が張り始め、空から落ちる雨粒も途中で凍り、小さな氷となって砕け散った。


そして、広場へ出た。


「……。」


そこには一人の少年が立っていた。


年齢はだいだい僕と同じ。


白銀の髪に、病人のような青白い肌。


それは、今にも消えてしまいそうに感じた。


少年は裸足のまま冷たい石畳の上に立っていて、その周囲の地面は凍りついていた。


少年はゆっくりとこちらを振り返り、透き通るような深紅の瞳が僕をじっと見つめた。


その奥には深い諦めがあった。


「来てくれたんだね。」


その声を聞いた瞬間、僕は確信した。


こいつが――冬。


冬を司る天使、フィオーラだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ