第46話 聖女、今日も水龍さまと世間話をする。
「――と、いうわけなんですよ」
『へぇ、そんなことになってたんだねー。クレアも大変だねー』
わたしは今日も今日とて、水龍さまとのほほーんと井戸端会議をしていた。
あんなことがあった後だけど、ライオネルからはいつも通りに過ごしてほしいって言われてるしね。
何よりやっとブリスタニア王宮の人の顔と名前が一致してきたばかりの宮廷素人のわたしに、国と国の問題でできることなんてないわけで。
「水龍さまはこの件でなにかご存じですか?」
わたしにできることと言えば精々こうやって、世間話ついでに水龍さまに聞いてみるくらいだった。
ちなみにさっきせっかく覚えたお花の名前なんだけど、実は間違ってたの……。
挨拶をしてすぐに最初の話題で水龍さまに言ってみたらね?
『ブーゲンジニアじゃなくて、ブーゲンビリアだよー』
って言われちゃったんだ。
おかしいなぁ、ちゃんと覚えたと思ったのに。
なんで間違えちゃったんだろ?
まさか最初から覚え間違いしてた、なんてことはないよね?
まさかね、あはは。
さすがのわたしもそこまでおバカじゃないんだから。
話を戻そう。
『んー、他国のことはあんまし分からないかなぁ。神龍のところにクビ突っこむとメンドそうだし、そもそもシェンロン王国じゃ私は顕現できないしなー』
わたしの質問に、水龍さまは今日もほやほやーっとのんびり答えてくれる。
「そうですよね……」
というわけで、わたしは完全に打つ手なしなのだった。
『あ、でもでも。最近までクレアはシェンロン王国に住んでたんでしょ? 酷い目にあってたとはいえ、生まれ育った国が大変な目にあっているのは複雑な気分でしょう?』
「はい。シェンロンにはわたしを育ててくれた孤児院と、シスターさんもいますから……」
『みんな無事だといいねぇ』
心配した水龍さまが祈るように言ってくれる。
ほんと龍と巫女っていうより、年の離れた妹を心配する優しいお姉ちゃんって感じだよね。
「まぁ、あまり考えても仕方ありませんので。ライオネルが探りを入れてくれるって言ってくれてますので、その結果を待とうと思ってます」
『うんうん、それがいいよー。昔から、果報は寝て待てってね』
「じゃあこの話はこれくらいにして……ところで水龍さま、ライオネルとの事なんですけど。水龍さまにこの前アドバイスをもらったとおりにしたら、すごく喜んでくれまして! 今日はその報告をしたいなって思うんですけど」
わたしは努めて元気よく言った。
湿っぽい話はもう終わりにして、ここからはいつもみたいに楽しくお話しましょう、っていう意思表示だ。
だってわたしは『水龍の巫女』だもん。
水龍さまに心配かけるんじゃなくて、水龍さまを楽しませるのがわたしの使命なんだから!(キリッ
『わわっ、それ聞きたい聞きたい! わくわく!』
水龍さまもわたしの意図をくみとってくれて、いつもよりも元気よく話に乗ってくれる。
「実はですね――」
『ふんふん!』
そこからはわたしと水龍さまは、いつものように楽しくおしゃべりをしたのだった。




