4月 ラブレター 5 交差する真相
黒田コウ と 水沢詩織
コウがつぶやく。
「『僕らの青春トライアングル』」
やがて。
詩織が小さく呟いた。
「黒田君や一条さんまで巻き込んじゃって、本当にごめんなさい」
「巻き込まれた・・・ってほどでもないけどな・・・」
コウも頷く。
「私、長谷川君に謝ってきます」
「アイツはまだ気づいてないし、まあ、喜んでる最中だから・・・
プラスマイナスゼロってことでいいんじゃないかな?」
「そういうわけには行きません」
詩織は苦笑した。
そして。
少しだけ安心する。
コウは怒っていない。
事情を理解してくれている。
それだけで随分救われる気がした。
「伸二、呼び出そうか?」
コウが言う。
詩織は首を横に振った。
「ううん」
「これは私がちゃんと話します」
「そっか」
「私がやらなきゃいけないことだから」
コウはそれ以上何も言わなかった。
ただ静かに頷いた。
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二人のやり取りを。
離れた場所から見ている者がいた。
一条美咲だった。
「・・・」
胸が痛かった。
自分は何をやっていたのだろう。
自分を過信した。
勝手に決めつけて。
勝手に応援して。
勝手に背中を押して。
その結果。
詩織を傷つけてしまった。
「最低ね・・・私」
小さく呟く。
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そしてもう一人。
別の陰からその様子を見ている人物がいた。
長谷川伸二である。
コウと話す詩織の笑顔。
もちろん。
またも盛大に勘違いしていた。
伸二は、純粋な少年なのだ、
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翌日。
放課後。
美咲は詩織を待っていた。
「詩織ちゃん」
「え?」
呼び止められた詩織が振り返る。
美咲は深く頭を下げた。
「ごめんなさい」
「え?」
「勝手なことして」
詩織は一瞬だけ驚き。
やがて小さく笑った。
「私の方こそ、ごめんなさい」
「え?」
美咲は首を傾げる。
意味が分からない。
すると詩織は少し恥ずかしそうに言った。
「私」
「小説を書いているんです。」
「う、うん」
「みなさんのことを書いているんです」
「え?」
思考が止まる。
詩織はスマートフォンを取り出した。
小説投稿サイトを開く。
「これです」
画面を差し出される。
美咲は読み始めた。
そして。
「ええええええええええええええええっ!?」
校舎に響くほどの声だった。
三十分後。
読み終えた美咲は頭を抱えていた。
「私って・・・」
苦笑する。
「みんなからこんな風に見えてるの?」
詩織は慌てた。
「違います!」
モデルです!
勝手に脚色してます!
ごめんなさい!」
美咲は吹き出した。
「まあ確かに」
「半分くらい合ってる気もする」
「半分なんですね……」
少しだけ空気が和らぐ。
しかし。
美咲は気づいていた。
小説の中の主人公。
その描写だけ熱量が違う。
主人公であることを差し引いても熱い。
「詩織ちゃん」
美咲は言った。
「伸二のこと、本当によく見てるのね」
「それは・・・」
詩織は少し照れた。
「主人公ですから」
「主人公だから?」
「はい」
即答だった。
「主人公は一番大事ですから」
美咲はしばらく黙る。
その横顔を見つめる。
そして。
「詩織ちゃん」
「はい?」
「伸二のこと、本当はどう思ってるの?」
詩織が固まった。
「え?」
「だって」
美咲は優しく笑う。
「伸二の良いところ」
「本当によく見えてるもの」
詩織は答えられなかった。
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一方その頃。
長谷川伸二は昨日の光景を思い出していた。
中庭。
水沢詩織。
黒田コウ。
二人が話していた。
詩織は涙を流していた。
それなのに。
最後は笑っていた。
とても綺麗な笑顔だった。
しかも。
その相手はコウ。
間違いない。
伸二は確信した。
やっぱりそうか。
コウは詩織のことが好き。
そして、
水沢詩織が好きなのも、
黒田コウだ。
間違いない。
良かったな、コウ。両想いだ。
親友の恋を応援していた身としては感慨深い。
ひとり納得し、教室に帰ろうとしたその時。
「長谷川君」
後ろから声。
振り返る。
田中美雪だった。
美雪はどこか決意を固めた顔をしていた。
「少しだけ
お話できますか?」
伸二は首を傾げた。
そして。
この少女が。
ラブレター騒動の真相を知る人物であることも。
これから聞く話によって、自分の勘違いが、また盛大に加速することも、
まだ知らなかった。




