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【書籍化】悪童王子と捨て猫~ワケあって、王子の推薦で執行官やってます~  作者: 林檎


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 同じ頃、王城の隅の経理監査部二課室では夜会にほとんどのメンバーが出払っていてレインとロイが書類仕事をしていた。


「レイン先輩もセシアさん達の方に行く予定でしたよね?残りは僕がやっておきますよ」

 ロイに言われて、少し急いで書類を処理していたレインは顔を上げる。彼は繁忙期にも関わらず数日休暇を取っていたので、珍しく担当分が遅れているのだ。


「悪いな、ロイ」

「構いません。キース先輩にはいつも押し付けられていますから」

 嫌味なくロイが笑って言うと、レインは額に手を当てた。

「あいつは……断っていいんだぞ」

「いえいえ、適材適所ですよ。キース先輩みたいに荒事は僕には向いてませんから、書類仕事でぐらい活躍してみせます」

 ロイは本気でそう思って言っているが、彼が業務の傍ら研究した魔法理論は発表されるやいなや魔法研究者達の間では注目の的であり、二課にいつまでも留めておいていいものか悩む程なのだ。

「じゃあ……悪いが後を任せる。お前も適当なところで帰っていいから」

「はい、お疲れ様です」


 レインはそう言ってロイに任せると、早足で二課室を出て行った。やはり予定より遅れていたようだ。キースは、レインがセシアにキツイことを言ったと憤慨していたが、なんだかんだ言ってもレインも彼女のことが心配なのだろう。

 ロイは温かな気持ちになって、先にレインのやり残した書類の方から片付けてしまおう、と彼の机に向かう。


「僕も夜会の方に参加したかったなぁ。セシアさん、元気かな?」

 彼は最近セシアに会えていないが、結婚式には同僚として出席する予定なので遅くともその時には会える筈だ。

 キースは、セシアはとても綺麗になってといたと言っていたが、ロイにとってはセシアは出会った頃から綺麗な人だった。

 顔立ちは元々整っていると思っていたが、化粧けがなく身だしなみにあまり頓着していなかった彼女は一般的に言って美人、とは称されていなかったが、身の内から溢れ出るような勝気さを湛えていたのだ。

 辺境伯の息子であり魔法の才能に恵まれたロイは、本人の望みとは別に注目され続けてきた。それにうんざりして、地方の学校を卒業した後王都に来たのだ。ここならば、さほど自分の出自も能力も目立たないだろう、と。その目論見は正解だった。

 そして、そこで出会った年上の同期であるセシアは生まれも才能も持っていなかったが強い意志と負けん気を漲らせていて、温室育ちの貴族の子女の反感を買うのは目に見えていた。だがロイにはとても眩しく、そして美しく感じられて、以来彼はずっとセシアのファンだ。


 マーカスに彼女の魔法の師となることを提案された時も、嬉しくて快諾した。少し手ほどきをすればセシアは魔力量が多いわけでも特殊な技能に優れているわけでもなかったが、器用で努力家だった為どんどん吸収して出来ることを増やしていき単純に教える方としても楽しかった。

 セシアが実力を発揮して活躍していく姿を見ていて、ロイの方もまた研究に打ち込む気持ちが湧いてきたのだ。


 そんなことを考えつつ、ロイはまず書類を分類していく。レインの残した分は量はさほどないのだが、キースや他の課員がどんどん課長代理の彼の机に別の書類を乗せていくものだから、発掘して仕分けする作業の方が大変そうだ。

 経理監査部二課は、マーカスが非公式かつフレキシブルな動きをする為に作った部署であり、ジュリエットの件で二課の存在が認められた今となってはマーカスの権力はさほど必要ではなくなっていた。

 警備部とも関係は良好であり、最近ではそちらからの事前調査などの仕事を回されているほどだ。

「キース先輩……書類は紐で纏めるなりして提出してあげてください……」

 独り言を言いつつロイの手は淀みなく動いていく、そこでふと今までとは様子の違う書類の束が出てきてオヤ?となる。


「何だ、これ?警備部?別の書類が紛れてしまったのかな……」

 そして確認の為に開いて、ロイは驚いて目を丸くした。



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