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第四話 悪魔の拷問3

 時は悪魔ちゃんが、紅茶をこぼしてから数分後。

 場所は変わらず、天使ちゃんが捕まっている部屋。


「よし、これで完璧なのです!」


「うぅ……まだぴりぴりするのじゃ」


 と言ってくるのは、ベッドの上に仰向けで寝転がる悪魔ちゃんだ。

 悪魔ちゃんはお腹が気になるに違いない。なにやら、お腹をさすさすしている。

 天使ちゃんはそんな彼女へと言う。


「触ったらダメなのです!」


「なんでじゃ! おぬしに指図されたくないのじゃ!」


「悪魔ちゃんの火傷は、わたしが回復魔法で治したのです! でも、まだ完璧に治癒したわけじゃないのです!」


「だからなんじゃ! 回りくどいのじゃ!」


「そうやって火傷の痕を弄っていると、バイキンが入って凄い事になってしまうのです!」


「す、すごい事じゃと……い、いやじゃ! 妾、触るのやめるのじゃ!」


 ひょいっと、すぐさま手を引っ込める悪魔ちゃん。

 きっと、天使ちゃんの脅しが効いたに違いない。


 正直、天使的に脅すのはどうかと思った。

 けれど、人助けのためならば仕方ない。

 などなど、天使ちゃんがそんな事を考えていると。


「どうしてじゃ」


 ぴょこっと、身を起こす悪魔ちゃん。

 彼女はベッドの上にペタリと座ると、天使ちゃんへと言ってくる。


「妾はおぬしに、酷い事をしようとしていたのじゃ! なのにその……どうして、妾の怪我を治してくれたのじゃ」


「そんなの、決まっているのです。わたしが天使だからなのです」


「むぅ……う、うそじゃ! おぬし、妾を懐柔しようとしているのじゃ!」


「そ、そんなことないのです!」


 本当だ。

 天使ちゃんは、そんな事を微塵も考えていなかった。


 ただ単に、火傷した悪魔ちゃんを助けたい。

そう思っただけだ。

 けれど。


「おぬしは卑怯な天使じゃ! 卑怯な天使はぶっとばしてやるのじゃ!」


 言って、立ち上がる悪魔ちゃん。

 彼女は右手に魔力を込めて、天使ちゃんへと殴りかかって来ようとし――。


「あぅ!?」


 こけた。

 弾力のあるベッドの上で、立ち上がったのが悪かったに違いない。

 悪魔ちゃんは顔面から、盛大に床にダイブした。


 ドガッ。


 と、響く痛々しい音。

 悪魔ちゃんは、床にくの字で突っ伏したまま動かない。


 正直、心配すぎる。

 故に天使ちゃんは、すぐさま悪魔ちゃんへと駆け寄る。


「だ、大丈夫なのですか!?」


 言って、天使ちゃんは悪魔ちゃんを抱き起す。

 そして、悪魔ちゃんの顔を見てみると。


(鼻血が出ているのです!)


 当然、放置などできるはずがない。

 故に天使ちゃんは、悪魔ちゃんの鼻に回復魔法を使う。

 すると。


「う、ひぐぅ……」


 と、涙を流している悪魔ちゃん。

 けれど、彼女の鼻血は回復魔法によって、確実に止まってきている。

 天使ちゃんはそれを確認したのち、悪魔ちゃんへと言う。


「これで安心なのです。もうベッドの上で、急に立って動いたりしたらダメなのですよ?」


「うぅ……」


「天使ちゃんとの約束なのです! 悪魔ちゃんは――」


「……知らん」


「はい?」


「知らないのじゃ! このクソ馬鹿天使! おぬしとの約束なんて、知らないのじゃ! バ~カ!」


 言って、天使ちゃんの手を振りほどき、扉の方まで走っていってしまう悪魔ちゃん。

 彼女はそこで振り返って来ると、天使ちゃんへと言葉を続けてくる。


「バーカ! バーカバーカ! おぬしの神様で~べそ!」


「そ、そんな口をきいたらダメなのです! ダメな大人になってしまうのです!」


「妾はもう大人じゃバカ! このバカ天使め!」


「いいですか、悪魔ちゃん! わたしは気にしません……だけど、こういう場合――他の人にはちゃんとお礼を言わないとダメなのですよ!」


「あ~もう! うっさいのじゃ! 妾は悪魔だからいいのじゃ!」


「悪魔だからどうのじゃないのです! これは世間の常識の――


「くっ、頭がどうにかなりそうじゃ! おぬしの拷問はまた明日じゃ!」


 言って、部屋から出て行ってしまう悪魔ちゃん。

 天使ちゃんはすぐに、彼女の後を追おうとする。


 けれど、扉は開かない。

 きっと、外から鍵が掛けられているに違いない。


「まだ話は終わっていないのです! 戻ってくるのです!」


「うっさいのじゃ! バカ天使! でっかい声出すななのじゃ!」


 と、扉の向こうから聞こえてくる悪魔ちゃんの声。

 そんな彼女の声は、すぐに遠ざかって行ってしまうのだった。


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