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修行生活

 場所は寺の中庭の一部だった。本来なら自室で次週のはずだったのに庭に引っ張り出された。

 次郎法師とお花の前に二本の薙刀が置かれている。

「確か、今は勉学の時間ではなかったですか」

「これも勉学である」

 南溪法師は重々しく言った。

 僧兵というものもいる以上、薙刀の修練もそうとしての修行だと言われればその通りなのだが。

 なぜだろう、自分の思い描いていた出家生活とだいぶずれているような気がする。

 そんなことを思いながら、次郎法師は薙刀を手にする。

 お花は馬術こそ覚えたが、武器の扱いまでは習得していない。

「まず次郎法師が、お花に薙刀の扱いを教えて、それから基本練習をするように」

 次郎法師は幼い頃から薙刀の扱いは毎日のように修練を積んでいた。まずお花に教えろというのはわかる。

「じゃあ、素振りの練習から」

 薙刀の切っ先を正面に振り下ろす形の素振りをやってみせる。

「これをまねしてみて」

 お花も振り下ろすが、薙刀の長さを持て余し、体のバランスを崩した。

「足を少し開き気味にして腰を落とす、下腹に力を籠める」

 そう説明したが、お花には何が何だかわかっていないようだ。

「人にものを教えるのは難しいだろう」

 南溪法師はそう言って、次郎法師の肩をたたいた。

「これも、修行だ」

 二人の悪戦苦闘は小半時ほど続いた。

「申し訳ありません、腕が上がりません」

 本来は次郎法師より腕力のあるお花が音を上げた。

「無駄な力が入りすぎているんだ、うまく力を抜けばそんなに疲れないぞ」

「力を入れずにあんなもの振り回せません」

 こればっかりは回数をこなして、コツをつかむしかない」

 二人の対戦などあとどのくらいかかるだろうと暗澹たる気分になった。

 薙刀は重い、その重さが、か弱い女性の腕力に程よい殺傷力を産むのだが、その重さに振り回されているうちはまだまだというところだ。

「あれ? 毎日の水汲みにさらにこの修行って、もしかして家にいるよりきつい?」

 明らかに運動量が増えている。

 そして勉学のほうも難しい漢文の書籍を何冊も並べられ、読みこなせる世になれと命じられた。

 朝は夜明けとともに起き、体力勝負の家事を行い、昼は薙刀などの武術、夜は燈明の灯りのもと、黙々と漢文を読み、気の休まる暇もない生活。

 なんだか思っていたのと違う。

 さすがに漢文の勉強までは付き合えないのでお花は咲きに休んでいる。

 こんなはずじゃなかったのに。

 もしかしたら、南溪法師は何か企んでいるのだろうか。

 法師の真意は見えないまま次郎法師は書物をめくった。


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