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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
69/80

対オルトロスは反転の味

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 オルトロスと獣人達の攻防はあまりにも一方的だった。それぞれの長けた能力を活かしたコンビネーションで、相手に攻撃する手を与えずに押している。

 圧倒的な攻撃が始まって早三十分。ファングの丸太の様に太い腕から繰り出される裏拳や、全体的に筋肉質である牛のおっちゃんの飛び後ろ蹴り、といったどこかパフォーマンスチックでありながら攻撃力の高い攻撃を受けてこれだけ耐えたオルトロスは流石と言うべきだろう。


 だがその自慢の体力も底が近いようだ。オルトロスの四肢がダメージによる疲労からか折れてきた。それを確認したファングと牛のおっちゃんが、ダメ押しとばかりに攻撃の手を激しくしている。



「意外と呆気なかったけど終わりかな?Aランクの魔獣が思ったより弱かったのか、獣人が強かったのか…」



 俺がそう呟いたその時、一陣の風が吹いた。とは言っても、髪も揺れない小さなものだ。運悪く俺は、その風に乗ってきたであろう小さなゴミが目に入ってしまった。そのゴミのせいで視界が遮られ、ゴミを目から取り出すためにある程度の時間を要した。


 その間はほんの数秒。その数秒後、俺が目にしたのは地に伏しているオルトロス、ではなく。



「陣形を崩すな!優先するべきなのは敵の撃破だ!」



 フォーメーションを崩すまいと怒号を上げるファングの姿と、血の水たまりに浮かぶチーターのお姉さんの姿だった。


 平和だった前世と違って、ここは戦いが日常的に発生する異世界。冷静だったかどうかは別として、ある程度の状況はすぐに認識できた。

 血溜りに浮かんでいるチータのお姉さん。血を流している体を前足で踏み潰している、着地したような体制のオルトロス。目を離す前と現在で居る位置が変わったのも考えると、オルトロスがチーターのお姉さんに飛びかかったのだろう。徐々にオルトロスの体制が低くなっていったのはダメージからの疲労ではなく、力を貯めるためだったのだ。


 一手で、状況は反転するのだ。


 チーターのお姉さんが戦闘不能になったことで、戦況は大きく変わってしまった。なまじコンビネーションが良かったのが災いしているのだろう。一人失っただけで立場が逆転してしまった。特にやられてしまったのが囮役だったのが大きいだろう。今残ったメンバーはなんとか体制は整えたものの、攻撃を避けることに必死であまり反撃が出来ていない。


 オルトロスが受けていたダメージも徐々に回復してきている。このままでは一人、また一人とやられていくことだろう。 魔獣はランクが上がると頭も多少良くなるらしく、オルトロスの動きが、先ほどまでは必死に攻撃していたのに、今は獲物を(なぶ)る感じになっている。つまりは遊ばれているのだ。



「でもその中途半端な知性が油断につながるんだ。人間を舐めるなよ」



 俺はそうつぶやきながら持っている『人』を丁寧に地面に置く。


 オルトロスはまだ気づいていない。先ほど切り裂いたチーターの獣人がいなくなっていることに。そして、代わりの囮役を追加すれば、戦況が元に戻るということに。

春休みって幻想だったんですね

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