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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
68/80

対オルトロスは連携の味

先月は投稿できず、すいません!

 オルトロス。

 全長二メートル強。顔が二つあり、全身は黒い毛で覆われている。何一つ情報に誤りはない。それなのに、実物を目の前にするとこうも違うものなのだろうか。


 数メートル離れた木の陰から見たオルトロスは、まさに怪獣だった。数字よりも大きく見える体。少し押し込むだけでざっくりと突き刺さりそうな爪と牙。禍々しく見える黒い毛皮。睨まれただけでショック死してしまいそうなほど凶悪な顔。口から吐かれる息の温度と気温が違いすぎるせいか、口の周りの空気が揺れている。

 Bランクの暴牛(ぼうぎゅう)も禍々しく、思ったよりも大きかったが、オルトロスとは比べ物にならない。ランクが一つ上がるだけでこんなにも違うものなのだろうか。


 恐怖で行動を躊躇っている俺に対し、獣人たちの対応は迅速だった。目標を見付けるやいなや、敵に見つからないようにしつつ自分たちの戦いやすいようにフォーメーションを組み、アイコンタクトで攻撃のタイミングを合わせている。つい最近まで奴隷で、戦闘を行う機会は多くなかったはずなのに一体このコンビネーションはなんなのだろうか。



「ふん。人間はよぉ、あらゆる物事に対して練習やテンプレートがないと何にもできねぇ。アドリブに弱すぎるんだよぉ」



 敵を前にして何も出来ない俺に向かって、ファングは馬鹿にするような口調でそう言った。おそらく恐怖で動けないことが分かっているのだろう。そして、俺を馬鹿にするだけあって、ファングを初め獣人に恐怖や緊張といった感情は見られない。初陣形と思えないコンビネーションといい、なんという適応能力だろうか。


 やはり獣人は、人間より遥かに優秀だ。



「お前はそこでガタガタと震えてやがれ」



 ファングの間伸びした口調が変わり、辺りの空気がピン、と張り詰める。どうやら戦闘開始のようだ。


 先に攻撃を仕掛けたのは、もちろん未だ敵に認識を許していない獣人達。その中でも最も速くアクションを起こしたのは、コウモリのお姉さんだった。


 アクションを起こすといっても、直接的な攻撃をするわけではなかった。コウモリのお姉さんが発したのは、一部の動物が会話をするときやどこに何があるかを調べるために使う『超音波』だ。ファングを初め他のメンバーは予め耳を塞いでいたが、少し反応が遅れた俺はその音を聞いてしまい、脳みそを直接掴まれてシャッフルされている感覚に陥ってしまった。視界は歪んで、気を抜いたら吐いてしまいそうだ。


 少し反応が遅れた俺でさえこれなのだ。なんの防御も出来なかったオルトロスはさらに悲惨なことだろう。現に今オルトロスは口から微かに悲痛な声を漏らしながらぐったりしている。


 そのことを確認した獣人達のが一斉にが風のように速くオルトロスに向かって駆けていく。


 コンビネーションが上手く、連携がしっかりしている獣人達だが、個々で戦えないというわけではない。むしろ、連携をとるより個々で戦った方が純粋な戦闘力では上だろう。今回は攻撃力の高い相手なのもあって、なるべくダメージを分散させるために連携しているのだ。だがそれでも、戦闘力は十分に強かった。

 チーターのお姉さんと馬のお兄さんがその自慢の脚力で逃げ回りオルトロスを翻弄している間に、攻撃力に自信のある牛のおっちゃんとファングが敵を叩く。そしてコウモリのお姉さんが援護という感じで、自分の特性を活かした戦い方はうまく型にハマり、現在では一方的に相手を攻撃している状態だ。


 固めの毛と筋肉があまりにも強いのか、筋力自慢の牛のおっちゃんとファングでも徐々にしかダメージを与えられていないようだが、それも時間の問題だろう。オルトロスの攻撃の手は少しずつ、しかし確実に遅くなってきている。


 俺が心配する必要はなかったか、と緊張を解いたその時だった。Aランクの魔獣が、本格的に牙を剥いたのは。

先月投稿しなかったせいか、総合評価がガタ落ちでした…

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