新しいモノは犯罪の味
「さて、これからどうすっかな…」
獣人全員の治療を終え、既に死んでしまっていた獣人の弔いを出していると、すっかり夜になってしまっていた。治療が終わったと言っても、優に百を超える獣人がここに集まっている。食糧問題、金銭問題、さらにここら一帯は治安が悪いので、防犯問題なんかも解決しなくてはならない。
食糧問題と金銭問題は、一時的にはどうにかなるのだ。俺が獣人にあげればいいだけの話なのだから。だが、俺の懐具合はそこまで潤っているわけではないので本当に応急処置でしかない。それに俺は学生だ。夏休みが終わったら支給も止まってしまう。親に頼るのも考えたが、偏見が強いこの世界の常識がある以上、気軽に相談できるものではない。
防犯問題はさらに深刻だ。獣人がそこら辺のゴロツキに負けるとは思えないので、強盗なんかに会うことはないだろう。しかしここは以前奴隷売り場だったので、もしかしたらここで買い物をしたことのある人がまた来るかもしれないのだ。そうなったら非常に面倒なことになる。健康な獣人が集まっているこの状況を見れば、ここが獣人の溜まり場になっていると思われてしまう。それが原因で、騎士団やギルドが一掃しに来るかもしれないのだ。
「やっぱりギルドが使えないのは痛いな…」
資金集めで最も堅実な手段はギルドで仕事をこなすことだ。獣人は身体能力が高いので、雑用から魔獣の討伐まで幅広く活躍できる。しかしここでも、人種の壁が立ちはだかっている。獣人では依頼は基本的に受けられず、受けられたとしても報酬を大幅に減らされる、などの理不尽な扱いを受けることになるのだ。
となると、自分たちでギルドを作るのが一つの手だが、獣人だけのギルドはおそらく認可されないだろう。
それ以外だと、ギルドに依頼を流してもらうしか方法がない。これならばギルドに行くのは一人で良いし、誰が依頼をこなそうとギルド側は分からない。まあ、流れてくる依頼は曰く付きが多いのだが、贅沢は言ってられないだろう。
しかしこれも食糧問題、金銭問題と同じく、夏休みが終われば俺は学園に帰らなければならない。それまでは俺が依頼を持ってくればいいのだが、それ以降はどうしようもないのだ。
そうして頭を悩ませていると、暇そうに毛繕いをしていた狼が話しかけてきた。
「お前は何をそんなに悩んでおるんじゃ?ギルドがどうとか言っておったが」
「俺にはハイラって言う誇らしい名前があるんですが…。まあそれは今回置いといて、お金を稼ぐためにギルドを利用しようと考えてるんですけど、いい案が浮かばないんですよ」
「ふむ。確かに獣人に対する人間の嫉妬の感情はこの世界を覆い尽くしてなお、余りあるからの。では、裏ギルドを結成するのはどうじゃ?」
「裏ギルド?」
狼の話によると裏ギルドというのは、普通のギルドには出回るはずのない依頼が集められる場所らしい。依頼内容は弱み握りから強盗、暗殺などの犯罪に関わることばかりだ。確かにこれは普通のギルドでは受け付けないだろう。
何か新しいモノを求めての行動が奴隷売り場の発見に繋がり、獣人を保護し、果てには裏ギルドの発覚だ。
なんとも退屈しない人生だと、つくづく実感した時だった。
今月中にもう一回更新を目指します!




