動物は純粋の味
この世界には、『フェアリー』と呼ばれる『魔道具』が幾つか存在する。魔道具とは妖精が作り上げた便利アイテムのことで、魔力を流すことで使用できる道具だ。その中でもその『フェアリー』は効力も強力であり数もごく僅かの為、噂では金貨数百万枚で取引されるとも言われる激レアアイテムである。
現在、俺は喋る狼と一緒に『フェアリー』と呼ばれている魔道具の一つを使用して獣人を治療している途中だ。何故俺が『フェアリー』を持っているかというと、以前屋敷に勤めていた使用人が魔法に関する本をくれた時に一緒に貰ったからだ。最初は何故か硬い箱に入っていて何が入っているのか分からなかったが、学園から持って帰ってきた時に確認してみると箱が開いていて、中から出てきたのがこれだ。
この魔道具の名は『フェアリーティアーズ』。効果は、マナを注ぐことで対象者一人の怪我、病気などのありとあらゆる身体の異常を治す。
「しかしお前のような若造が『フェアリー』を持っているだけで驚きだというのに、マナの量が常人を遥かに上回るとは。お前一体何者じゃ?」
「俺からしたら狼が喋ってるのに驚きですし、君の方こそ何者って感じですけどね」
獣人というのは、人間の姿に各々の動物と同じ耳、尻尾が付いているだけなので、もちろん、身体能力なんかには違いがあるものの、基本的には人間と変わらない。なので、獣人だからといって全身を獣にできるわけではないのだ。全身が獣なのは魔獣くらいだが、この狼は襲ってくる様子もない。そもそも魔獣は喋れないし。となると、一体この狼はなんなのだろうか。
と、考えたいことは色々あるが、今はそんなことをしている場合ではない。『フェアリーティアーズ』は思った以上に便利だが、いかんせん数が多すぎる。約十秒ほどで人一人を完治させることが出来るが、作業が滞ってきているのだ。
俺は無駄だと思いながらも、獣人たちに再度呼びかけた。
「すいません、誰か手を貸してくれる人はいませんか?」
「何を言っとるんじゃ。お前が治療した奴は既に手伝っておるぞ」
俺はその言葉に驚いた。周りには怪我人、病人が多くて遠くが見にくいのだが、人の隙間を縫うようにして覗いてみると、確かに健康になった獣人が軽傷の獣人の手当てをしたり効率よく治療を受けられるように列を作ったりしているのが見える。
「まさか人間の俺の言うことを聞いてくれるなんて…」
「別にこやつ等に乱暴したのはお前じゃなかろう。治療してくれたのなら手伝いくらいするわい。それに獣人は仲間意識が高いからの、言われなくともこうするじゃろ。分かったら作業に戻れ」
確かに俺が乱暴をしたわけではないが、人間にあれほど酷い扱いをされて普通平気でいられるものだろうか。前世では、見た目は獣人ほど変わらないのに国籍が違うだけで差別が起きるくらいなのに。
獣人は過去に何をされようとも、施しを受ければしっかりとお礼を言えるのだ。
俺は改めて思った。
「動物って純粋だなぁ」
何か一か月に一回の更新が定着してきたこの頃。
執筆スピードが遅いのに見続けてくれている方々、本当にありがとうございます。




