協力者は狼の味
「勢いでやってしまったが、反省も後悔も俺はしないぞ」
つい、かっとなっておっさんの顔面に一撃食らわしてやったはいいが、まったくのノープランだったのでこれからどうすればいいだろうか。
おっさんは殴られた直後は顔を真っ赤にして怒っていたが、自分を殴る為に使われた袋の中に金貨が入っていることが分かると表情を一変させて笑顔になり、建物ごと獣人を全員買い取ると伝えると、ただでさえ歪んだ顔をさらに歪ませてスキップをしながら金貨の入った袋を持ってどこかへ行ってしまった。その姿にまたイラついてしまった俺は、その背中にドロップキックを浴びせるのだが、それはどうでもいいだろう。
金にまだ余裕はあるし、これからのこともまったく案がない、というわけでもないのでまずは獣人の確認をすることにした。
奥に進むと、応接室以外はどうやら牢屋になっているようだ。しかも想像していたものよりもずっと頑丈で、禍々しい。獣人は人間より基礎能力が高いので、牢も普通のものより頑丈にしないと壊して逃げてしまうため、こうなっているのだろう。
牢屋を覗きこむと、どうやら数人の獣人が一緒に入れられているようだ。その種類は様々で、犬の獣人、猫の獣人、兎の獣人と、より取り見取りなのだが、一つ共通点がある。それは、目が死んでいることだ。
「そんなこと気にならないくらい可愛くて昇天しそう!」
突然の告白だが、俺は動物が大好きだ。というのも、腐っていたニート時代の頃、動物というのは俺を大いに癒してくれた。従順な犬を見てハローワークに行く決意をし、気まぐれな猫を見てハローワークに行くのを止めた。結果的にはあまり良いモノではなかったが、心情的には救われたのだ。
なので、この世界に獣人がいることを知った時はあまりの嬉しさに発狂してしまったくらいなのだが、その直後に獣人の扱いを知り、また違って意味で発狂してたのは記憶に新しい。
そういった意味もあってこうして獣人を大勢助けることが出来たのは嬉しいのだが、思った以上に状態が悪い。怪我をしているのは当たり前、その怪我が膿んでいたり、何かの重い病気にかかって死にかかってるのもいる。まずはこの怪我人、病人をどうにかしよう。
「この中に体調が良い人はいませんか?居たら手を上げてください」
怪我や病気を治すのは良いが、俺一人では人手が足りなすぎる。ので、獣人の中で比較的軽症な人がいれば手伝って欲しかったのだが、やはりそう簡単な話ではなさそうだ。これまでずっと人間に虐待を受けてきたのだ。人間の言うことなど聞きたくもないだろう。現に、俺の言葉に反応した人はいない。
「はぁー、地道にやってくしかな──────────」
「わっしは体調良いぞ」
人手の補充を諦め、時間をかけて治療することを決めた直後だった。声をかけてきた方を見るために振り替える。
そこにいたのは、銀色の狼だった。
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