ハイラはライバルの味
負けた。それも、得意な魔法対決で、だ。
相手はハイラ・アースタック。入学時から色々な意味で注目を集めている生徒で、今、私たちの学年の中で最も嫌われている人物。そして、中流以上の貴族が半数以上を占めているこの学園でなければ、学年で最も好かれていたであろう人物。
彼のことを初めて知ったのは約一か月前。入学式から数日たって、私の耳に、ある噂が流れてきた。
『クロエ会長と引き分けた新入生がいる』
私は最初、この噂を信じることが出来なかった。誰もが最初は半信半疑だったのではないだろうか。クロエ会長は王族の中で最も武力に長けている人物だ。一年前の学園で開かれた大会では、王国の精鋭の兵士にも引けを取らなかったのだ。そんな人物と、新入生が引き分ける。信ぴょう性は薄い。
しかし、この噂が真実だと知らされたのは半月前。突然クロエ会長に勝負をしかけられた。そして、あっさり敗北した。一時間近く戦っていたせいか、私とクロエ会長の魔法の実力はほぼ一緒だと思われているが、実際は遊ばれていただけだ。事実、決定打となったのは、私の魔法を受けながらも突っ込んできて打たれた拳。つまり、その気になればいつでも決着はつけられたのだ。
その勝負の後、クロエ会長本人からハイラ・アースタックの話を聞いた。勝負自体の決着は早かったが、アイツは相当強い。おそらく手加減をされていた。そう、嬉しそうに話していた。この時ほど悔しい思いをしたことはない。この時からだろうか、私がハイラ・アースタックという人物を意識するようになったのは。
実際にハイラ・アースタックを目にしたのは次の日、ゴミ処理場でのことだった。そこにいたのはなんとも優しい顔をした金髪の美男子と、みすぼらしい服装をした小柄な少女。一人では処理できない量のゴミを、二人で片づけている場面を目撃した。少女が申し訳なさそうにしているところから察するに、貴族のお嬢様方からゴミの処理を押し付けられたて困っていた少女をハイラ・アースタックが発見し、手伝っているのだろう。ハイラ・アースタックという人物がどのような人なのか、なんとなく分かった気がした。
さらにその次の日、ハイラ・アースタックを気にするようになり、どのような人物か知って初めての教室は、私の知っている教室ではなかった。「ハイラ・アースタック」という単語が会話に出るたびに聞き耳をたてるようになってしまった私に飛び込んでくるのは、決まってハイラ・アースタックについての罵詈雑言とも言えない、妬みの言葉。しかも暴言を吐いているほとんどが上流貴族だ。元々噂話が教室内で飛び交っているのは知っていたが、その噂話のほとんどがハイラ・アースタックのことについての悪口だとは思わなかった。貴族は醜い。そのことを再確認できた日だった。
そうした事から私が分析したハイラ・アースタック、という人物の人柄はこのようなものになった。
入学時から色々な意味で注目を集めている生徒で、今、私たちの学年の中で最も嫌われている人物。そして、中流以上の貴族が半数以上を占めているこの学園でなければ、学年で最も好かれていたであろう人物。
元々は平民で、スピード出世した家系の娘である私だからこそ、ハイラ・アースタックという人物の評価を誤ることはない。貴族で平民に優しい、というのは異常な事なのだ。
そんな評価をした人物と戦って負けた。もちろん、悔しくないわけではないが、不快というわけでもない。今もこうして、私が目覚めるまで待っていてくれていた。
そんな彼は私にとっての理想であり、憧れであり、そしてライバルだ。
だが、一つだけ気になることがある。こうして話して戦っているのだ、その人物について何かを知ることが出来るはずだ。なのに、私は分からないことができてしまった。彼の顔を見るたびに、鼓動が速くなってしまうのは、一体なぜだろうか。
忙しい。やばい。更新できてない




