チビッ子は強者の味
俺は少し人通りの多い街頭を歩いていた。後ろに小さな女の子を連れて。
「えーと、なんで付いて来てんの?」
「お礼がしたいわ」
「いやさっきお礼貰ったよ!?メリット教えてくれたじゃん!」
「あれではダメ」
正確には連れて、ではなく、付きまとわれている、だが。
どうやらネクロマンサーの件のついでに、という感じで言っていたことだったので、これではお礼にならないと考えているらしく、他にお礼をするまで離れる気はないらしい。とはいっても、こちらも特に頼みたいことなんかもないので、こうして付きまとわれても困るのだが。
今の時間はちょうど下校時間と被っているらしく、人通りが多い。俺は別に大丈夫なのだが、後ろを付いて来ている女の子は結構小さいので、人の波に揉まれて大変そうだ。それでも必死に俺に付いて来ようとしているので、こちらとしては申し訳ない気持ちがあるのだが、どうすればいいだろうか。
「じゃあ、名前教えてくれない?」
「レミーユ。レミーユ・オルスロット」
「これがお礼じゃ駄目か?」
「ダメ」
「ですよねー」
苦し紛れに、名前を聞いてそれをお礼にしてもらおうとしたがやはり駄目だった。昼飯を奢ったことを後悔し始めている自分がいるが、もう手遅れだ。
「…レミーユ、レミーユ。どっかで聞いたな、この名前」
言われてすぐは特に気にもしなかったが、名前をしっかりと覚えると、何かが頭に引っかかるのを感じた。そう、どこかでこの名前を聞いたことがあるような気がしているのだが、それがどうしても思い出せない。
悶々とした感情を持て余しながら歩いていると、つい先ほどすれ違った女子の集団の会話が聞こえてきた。その集団の全員が青いネクタイを着けている。つまりは中等部一年生だ。
「ねぇ、さっきすれ違った小さい子って、もしかして『魔女』じゃない?」
「えっ、どこどこ?」
「『魔女』って誰ですの?」
「あっ、そっか。ソワちゃんは去年の終わりごろに転校してきたから知らないんだっけ。『魔女』っていうのは、初等部の頃にやった大会で準優勝した魔法がすっごい上手い子でね─────」
ピタッ、と足が止まった。いきなり止まったせいか、人混みを突破するのに必死で俺が止まったことに気付かずにいたレミーユは、俺の背中に激突した。
後ろを向くと、鼻を押さえたレミーユが、こちらを恨めしそうに見つめている。その視線を無視して、俺はレミーユの顔を見つめた。今もこうして眠そうな顔をしているし、あまり優等生には見えない。どちらかと言えば、授業を保健室なんかで寝てサボるタイプに見える。背も小さいし、筋肉もあまりなさそうだ。この子は本当に、準優勝者なのだろうか。
「なあ。アンタってもしかして、あの『魔女』って呼ばれてるレミーユか?」
「そうよ」
本物だった。それにしてもなんとあっさりとしたカミングアウトだろうか。俺だったらこんな二つ名みたいな、いかにも目立つ名前で呼ばれるのは嫌なので、隠すのだろうが、この子は別に気にしてないみたいだ。
そして、一つこの子に頼みが出来た。小さいが、あのクロエ会長と対等に闘り合った噂がある強者に。
「一つ、アンタに頼みごとが出来たよ」
「何?」
「─────俺と勝負してくれ」
次は天才少女との戦闘です




