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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
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暴牛はごまかしの味

 数分後、俺の視力と聴力は元に戻った。今は、かなり凸凹している地面に寝転がっている。


 感じ取った濃厚な『死』の匂い、結局それは杞憂だった。いつまで経っても攻撃が来る気配はなく、一度頬に柔らかい感触があったが、攻撃ではなかったようだ。というか、その感触があってから体が軽い。何をされたのか気になるところだが、それを確認する術はない。



「また負けたか…」



 高い高い空に向かって手を伸ばす。だがその手は、何も掴めない。


 入学式でクロエ会長に負け、そして今日また負けた。この短い期間の間で、二回も負けているのだ。この世界に来て、自分のスペックを確認した当時は、『負け』なんて言葉と関わるようになるのはかなり先の話かと思っていた。全属性を扱え、魔法の攻略の仕方も思いついた。体術も達人並、とまではいかないが、珍しい戦闘法を身に着けることが出来た。そして、天狗になったのだ。負けはないと高を括っていた。だが実際はこのザマだ。


 決して低くないスペックなのに、思い通りにいかないことに苛立ちを覚えているし、色々と投げ出したいと思っている。だが、そうする訳にはいかない。それでは一緒なのだ。自分の能力の高さを過信して、現実を見せつけられた時に諦めてしまった高校時代と。二度と、あの頃の二の舞にはならない。


 そうして何とか気力を保ち、帰るために立ち上がる。と、ここで遠くで何かが叫んでいるのが聞こえた。魔獣だと思って警戒するが、次に聞こえてきた声を聞いて、それが人間のモノだというのに気づき、そして俺は依頼を受けに来ていたことを思い出した。


 俺は素早く声のする方へと走り出した。おそらく、学園の生徒たちはあのすざましい威力の雷を見て、こちらに向かってきたのだろう。地面には雷の跡が残っているし、その近くに俺が一人ぽつんと立っていたら、俺が使ったんじゃないかと疑われるかもしれない。なので、なるべくここから離れたところで合流しなければいけない。


 とは言っても、既に声は近い。俺が使った爆雨のせいで、ここら一帯は見晴らしがよくなってしまっている。見つかるのは時間の問題だろう。それでも、なるべく遠くへ。



「…ん?」



 必死に走っている途中で、変な物を見つけた。よく見てみると、魔獣の死体みたいだ。こんなことをしている場合ではないのだが、好奇心に負けてその物体に近づく。

 それは禍々しい赤色の皮膚を持つ牛だった。あまりこの世界の知識に詳しくない俺が知っている、数少ない魔獣。名を『暴牛ぼうぎゅう』と言い、羊皮紙の材料や高級な食用の肉になる、珍しい魔獣だ。体には火傷の痕と、凹みが出来ている。地面には小クレーターが出来ているので、爆雨の範囲内だ。多分、爆雨に巻き込まれて死んだのだろう。


 そのことを確認した直後、前から声がかかった。



「あっ!ハイラやっと見つけたー!」



 前を見ると、ユリウスを先頭に、いつもの四人組が前に立っていた。



「転移鳥の転移に巻き込まれた時はどーなるかと思ってたけど、これで一安心だー」


「いや!その前にユリウス、下見てみろ下!」


「なーにラッツ?下に何が─────って暴牛!?え、なにこれ!?」



 ありのままを話すわけにはいかなかったので、転移されてから暴牛に会い、死闘の末勝利した、ということだけ伝えた。死闘はしたし、暴牛を倒したのも事実なので、嘘はついていない。ちなみに雷の件に関しては濁した。


 この話をしたらラッツとダグラスには尊敬の目を向けられ、ユリウスにはドン引きされ、ミーシャには怪我がないか心配された。

 色々あったが、まあ一件落着、というところではないだろうか。


 ちなみに、暴牛を倒したのが評価され、俺たちのランクは見事Eランクからのスタートとなった。さらに余談だが、暴牛はBランクの魔獣だそうだ。ユリウスがドン引きしていたのは、このせいだろう。

更新遅れてすいません。これからは元の1~2日で一ページのペースに戻せると思います

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