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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
52/80

ハイラはお気に入りの味

ちょいと視点が変わってます

「まさかコレを破られるとは思ってなかったわ…」


 ローブの女は火傷を負っている左半身を気遣いつつ、そう呟いた。火傷している上に電撃で痺れて、まったく動かすことが出来ない。そのことに対して舌打ちすると、体に被さっている土の破片を退けて前を向く。

 そこにはまったく動かないお気に入りの人物──────────ハイラが立っていた。どうやら自分が放った魔法の影響で、目と耳が一時的に機能しなくなっているみたいだ。


 ローブの女は一つ疑問に思っていた。最後にハイラが撃ってきた、あの魔法。感じ取ったマナは、自分が作り出した魔法を軽々と突破し、そして自分を気絶、または死亡させることが十分にできる量だったはずだ。なのに何故、今自分はこうして動いていられるのだろうか。


 ふと、視界の端に何かが動いているのが見えた。そちらの方を向くと、自分の手駒であった男が、土で体を補修されている姿が見える。しかし、その男はピクピクと動くだけで役に立ちそうにない。どうやら自分があの男にかけた魔法に干渉されているようだ。

 それを見て、自分が生きている理由が分かったような気がした。おそらく、男が土で体を補修しているのを見て、集中力を乱されたのではないだろうか。


 今日手に入れた女の死体はすぐに消し飛ばされ、男の死体も今は使い物にならない。男にまた新しく魔法をかけ直すだけのマナもない。もちろん、土のゾンビを作る余裕もない。体も満足に動かせない。つまり、手詰まりだった。

 目の前にいる男の子はどうしても手に入れたいが、今は諦めるしかないだろう。


「またね、ボウヤ。今度会ったら、デートでもしましょう」


 そう言って、片足で何とか近くまで行き、ハイラの柔らかいほっぺにキスをする。すると、ハイラの体はビクンッ!、と震えた。目が見えていないから、何をされたのか分からずに戸惑っていることだろう。そのことを思うと、自然と唇がほころんだ。


 キスをしたのには意味があった。まず一つ、ハイラがマナ切れでだったので、このまま無事に帰れるかどうか分からなかったからだ。なので、唇を通してマナをハイラの体に送り込むために、キスをした。しかし、別にキスでなくとも、手を握ったりと肌を合わせればよかったのだが、これは気分の問題だろう。

 二つ目は、この少年とつながりを作るためだった。ローブの女は、この世界に魔法以外の異能の力があることを知っていた。自分が使うことが出来るからだ。そして、その能力は一生表沙汰にならない、ということも。このキスにはやはり、意味があり、それがどういった効果をもたらすかは、自分自身にも分からなかった。それでも、この少年とつながることはできた。


 そうして、自分がここに居た、という証拠がないかどうかを一通り確認。ないことを確認したら、ピクピクと陸に上がった魚のような動きをした男に近づいていく。

 最後に、見えていないと分かっていてもハイラに向かって手を振り、ローブの女が男に触れると、二人は霧となり、空気へと融けていった。


 

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