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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
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対ローブの女はネクロマンサーの味

 思わず無詠唱で魔法を使ったせいでローブの女に目を付けられてしまったが、冷静さを幾分か取り戻した頭で状況を整理する。

 まずはローブの女。アイツは死体を操れる、所謂『ネクロマンサー』。あの皮膚が焼き爛れていた女の死体を手に入れようと、既に操れるようになった男の死体と一緒にこの場所に来て、そして俺に見つかって戦闘になった。問題は、どうやって死体を操っているか、だ。この世界は魔法が使えるが、万能ではない。使える魔法は、火、水、風、土、雷、この五つが原則だ。死体を操れる魔法なんてものは聞いたことがない。なので、考えても答えが出なさそうだからこのことは後回しだ。

 次に、どうやって目の前にいる女を倒すか、だ。俺が確認している限りではこいつの手駒は、皮膚が焼き爛れた女と中性的な男の死体のみ。片方は跡形もなく消し飛び、もう片方は四肢が満足に動かせない状態なので、見たところローブの女の手駒はもうない。もしかしたらまだ隠し持っているかもしれないが、そんなことを考えたらキリがない。ここで大切なことは──────────。


「先手必勝だっ!」


 掌にマナを凝縮、火の玉を形成。先ほど放った火の玉ほどではないが、直撃すれば昏倒は免れない。そのそこそこ威力のある魔法を、ローブの女目がけて投げつける。火の玉は結構なスピードで向かっていくが、やはり簡単にはいかないようだ。


「───────────────」


 はっきりとは聞こえないが、またしても歌うように何かを呟くと、ローブの女の足元の地面が盛り上がり、俺の魔法を防いだ。魔法が衝突した瞬間は盛り上がった土の半分くらいを消し飛ばすことが出来たが、すぐに修復され、気が付くと盛り上がった土は人型になっていた。それも一体ではなく、次から次へと土人形が出来上がっていく。


「コレはあの子達みたいに緻密な動きは出来ないけど、単純な戦力ならコレの方が上よ。ボウヤはどうやって対処するのかしら?」


 ローブの女が手を振ると、一斉に土人形たちが俺に襲いかかってきた。とは言っても、スピードはそんなにあるわけではなく、普通の人間の早歩き程度の速さだ。これなら対処できる。

 さっきと同じように火を使っても再生されてしまう恐れがあったので、今度使う魔法は、土と相性が良い風。両手にマナで出来た風を纏って、土人形に突撃する。土人形を風を纏った手で攻撃すると土が風化し、土人形はぼろぼろと崩れ、やがて塵となった。攻撃が有効なのを確認して、囲まれないようにうまく立ち回りながら一体一体を確実に壊していく。


 しかし幾ら壊しても一向に数が減っている気がしない。ふと、ローブの女の方を見てみると、土人形が次から次へと量産されていた。どうやら術者を直接叩かないとダメみたいだ。


(だったら…!)


 両手の風の鎧を解除すると、次の魔法の為にマナを練る。使う魔法はクロエ会長戦で使った爆雨。だが、その時とはマナを込める量が違うので、効果範囲も威力もクロエ会長戦より上だ。狙いは、土人形たちを牽制しつつ、直接術者に攻撃すること。


「まとめて吹っ飛べ!」


 掛け声と共に出現したのは、このあたり一帯を覆い尽くすほどの火の雨。こうして見ると幻想的だが、その一粒一粒の威力は爆弾並だ。

 大量の土人形たちに火の雨が触れると、一斉に爆発。あまりに爆発した数が多かったため、魔法を使った俺ですら思わず目をつぶってしまっていた。爆風が舐めるように俺の顔を通過していく。一通り爆発が終わったことを耳で確認してからそっと目を開ける。すると、地面には小クレーターがいくつも出来上がっており、木もここら一帯は無くなっている。空から見たらここら辺は禿げて見えることだろう。


 それでも、ローブの女には届かない。


「惜しかったわね、ボウヤ。もう少し威力が高ければ私に届いてたかもね」


 先ほどまでローブの女がいた場所には、土で出来たドーム状の殻が存在していた。もう少し、とローブの女が言っていたが、殻には傷一つ、ヒビ一つ見当たらない。あの殻、随分と防御力が高そうだ。そしてそれは、俺にとっての勝機でもあった。


(こっからは見えないけど、多分あの殻は全方位を守ってる。つまり、あの女はあの場からすぐには動けない。あの殻の防御力を大きく上回る攻撃が出来れば、俺の勝ちだ!)


 自信はある。使う魔法は、幼少期に一回、つい最近一回使った、落雷の魔法。両方とも、自分が思った以上の威力が出ていた。しかも、それは全力ではない。全力でなくとも、庭や林を焼くことも出来る。それを、全力で撃ったら?


「自分の体で確かめろ!くらえ、『神鳴かみなり』!!」


 ローブの女が籠っている殻より十メートルほど上空。莫大なエネルギーが溜まっているのを、肌で感じることが出来る。そして、俺の中では確信していた。

 この攻撃は殻を打ち破り、威力をあまり衰えさせることなく女に当たる。


 腕を振り下ろし、魔法発射の合図を送る。その時、見てしまった。四肢を壊したはずの男が、土で体を覆って、立ち上がる姿を。

 雷は、人体の表面に接触すると火傷、人体の中にまで流れると、心肺や心臓が停止する。しかし、臓器が全く機能していない者に対しては、何の意味もないのだ。しかも、あの男は土人形とは違って、自分で動ける可能性がある。これでは女に攻撃が当たってもアイツにやられる。


 そう思っても、手遅れだった。既に魔法は打ち出され、土のドームに直撃した。音は、聞こえなかった。あまりにも大きすぎて、耳が一時的に機能しなくなっている。閃光も以前使った時のよりも遥かに眩しく、目に軽く焼きついてしまった。


 しかし、俺は分かっていた。この攻撃がもたらした結果を。


「───────────────」


 あの、体の芯にまで響く声が、耳を使わなくても感じ取ってしまったのだ。つまり、あの女は死んでもいないし、気絶もしていない。

 俺は静かに、この先に待っているであろう、『死』を悟った。

自分なりには結構アツイ展開が書けていると思ってますが、どうでしょうか?

この戦闘も次の回でお終いです

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