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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
47/80

対うさぎはオーバーキルの味

ちょっとグロテスクな表現があります

 ラッツの独り言に相槌を打ちながら草原を歩くこと数十分、ついに目当てのモノを見つけることが出来た。

 先ほどのユリウスの情報に一つ付け足しておこう。ブリーズラビットは基本的に群れで動いている。腕試しとして使われることが多いので一体一体はそれほど強くないが、こうして数で襲ってくるので大量繁殖したときなどは依頼が出されるのだ。



「見たところ数は十匹くらいだし、ノルマは一人二匹ねー。それじゃー狩るぞー!」



 ユリウスの指示を皮切りに、ユリウス、ラッツ、ダグラスの三人は駆け出し、ミーシャは小走りでうさぎの群れに向かっていく。

 それに対して俺は、動かない。というか、動けなかった。


 この五人でならある程度の奴とだったら戦える、と思っている俺が、どうして討伐依頼を嫌がったのかというと、生き物を殺すのに抵抗があったからだ。現に今もこうして、一人動けずにいる。

 そうこうしている内に、他の四人はすでに戦闘に入っていた。



「求メルハ小サキ風ノ球=風球」

「求メルハ小サキ土ノ球=土球」

「求メルハ小サキ雷ノ球=雷球」

「求メルハ小サキ水ノ球=水球」



 詠唱はほぼ同時だったが、微妙な差でユリウス、ダグラス、ラッツ、ミーシャの順で魔法が放たれる。ユリウスの風の球は当たったものの、多少の切り傷が出来た程度だ。ラッツの雷の球も、感電で相手の動きを鈍くしたくらいの効果だった。

 そう、この程度の、多少の血が出るくらいなら大丈夫だと確信して言える。問題なのは生死を賭けた戦いだ。敵が肉片をまき散らしながら死ぬのを見て、俺は平常を保てるのだろうか。そして、その答えは、思ったよりも早く見つかった。

 ミーシャの魔法は的確だった。スピードがなかった代わりに、ミーシャの放った水の球は見事にうさぎの頭を覆ったのだ。元々戦闘力は皆無と言っていい魔獣なので、頭部に纏わりついた水を払う術は無く、あっけなくその命を散らした。だが、ミーシャはまだ良かったのだ。派手に血をまき散らしたりせず、静かに殺したのでそこまで動揺することはなかった。問題はダグラス。ダグラスの魔法の土の塊もまた、うまく急所の頭部を捉えた。そして、うさぎの頭は、ど派手に飛び散った。


 綺麗な緑色の草原に、真っ赤な血が広がっている場面を見た俺の体は──────────まるで呪いが解けたように動いた。そしてまた、口もスムーズに動いていた。



「求めるは小さき火の玉=火球」



 俺の放った火の玉は、吸い込まれるようにうさぎに向かい、そして、うさぎと一緒に爆ぜた。

 周りには肉が焼ける、少しいい匂いが漂っていく。だがそんな匂いを発している物体は、あまり見れたものではなかった。中途半端な火力だったせいで、綺麗に焼けていないのだ。皮膚が焼きただれていたり、体の一部分が焼き切れているところもある。


 そんな場面を見て感じたのは、ちょっとした違和感だ。罪悪感、恐怖、動揺。そんな負の感情は一切なく、あるのはちょっとした引っ掛かりだ。



(なんかおかしくないか?確かに日本にいた頃はゲームなんかでちょっと耐性付いたけど、こんなもんなのか?てか、車か何かに引かれて死んだ猫を見て吐いたの思い出したぞ。生まれ変わったりもしたけど、考え方あんかは変わってないし、そんな体質とか大きく変わってるわけじゃないよな。なんか、これだとまるで──────────)



 そこで、思考が切れた。いや、切らされた。原因は、我慢出来ないほどの腹痛。

 下を向いて、痛みが発生した理由が分かった。足元にいたのはうさぎ。攻撃を受けたのだ。そして、

その攻撃を受けた場所は、男のデリケートゾーン。

 その耐え切れない痛みによって、違和感やらなんやらがすべて吹っ飛んだ。代わりに手に入れたのは、このうさぎに制裁を下す、という怒り。


 くぁwせdrftgyふじこlp、と自分でも何を言っているか分からない怒号を叫びながら、うさぎと俺の生死を賭けた鬼ごっこが始まった。早くに決着が付くと思われたこの鬼ごっこだったが、予想を裏切り三十分にも渡る大接戦となった。

 三十分間ほぼ走りっぱなしだった俺にあまり体力は残っていない。がむしゃらに走っていたせいか、他の四人ともいつの間にかはぐれている。そして結構先に進んでしまっていたらしく、木が増えてきていて、うさぎもその木を利用してうまく逃げている。


 俺の体力が尽きたその時、俺は吹っ切れた。素早くマナを形成、そのマナを雷に変え、力任せに振るう。その結果得たものは、うさぎの始末とデジャヴ、そして火事だった。力任せに振るった雷は、俺の予想を超えて、物凄い光と轟音を生み出した。そしてその強力な雷はうさぎに直撃し、跡形もなく消してしまった。そのまま雷は地面に逃げ、葉っぱに引火。見事に火事となった。もちろん消火はしたが、とても疲れた一日だった。


 その時にはもう、違和感なんてものは綺麗さっぱりと忘れていた。

 そして物語は、少しずつ、少しずつ加速していく。

ちょぉっとずつ、展開が変わっていきます

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