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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
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中等部初日はパンダの味

 翌朝、俺は学園で動物園にいるパンダの気分を味わっていた。


 あの試合の夜、悔しい思いもしたが新しい目標も手に入れることができた。あの後、強くなると意気込み、治療してくれたミーシャにお礼を言ってから俺は寮に帰ったのだが、寮に帰ると疲れが出たのか、シャワーを浴びてベットに潜ったら、気を失うように眠ってしまった。明日からの学園生活を楽しみにしながら。

 だが、実際に学園に行ってみると、そんなに良いものではなかった。と言うか、居心地が悪かったのだ。


 朝起きて、日課の走り込みを終えてから俺は意気揚々と学園に向かった。その時に気付いたのだが、昨日の夜帰ってきても、寮に誰もいなかったのに気が付いた。昨日は疲れていたから気付かなかったが、これはおかしい。中等部からは、寮での生活は二人一組が基本なので、寮に俺一人なのは変なのだ。その件に関しては学園で先生に言われて初めて知ったのだが、俺と一緒に暮らすはずの生徒は、夏休み明け、つまり二学期から学園に来るらしい。つまり俺は夏休みまで初等部同様、一人部屋だ。これは俺にとって嬉しい知らせなのだが、今はそんなこと知る由もない。


 寮にルームメイトがいない理由に頭を悩ませながら校門をくぐると、何やら視線を感じ取った。一度考えるのをやめ、周りを見てみると、小奇麗な制服に不自然なアクセサリーを着けた生徒が一斉に俺のほうを向いている。結構な人数がこっちを見つめているので、ちょっと不気味だ。ネクタイを見てみると、俺に視線を向けている奴らは全員青、つまり一年生だった。

 この学園ではネクタイの色で学年分けされている。一年が青、二年が緑、三年が赤、という風になっている。ちなみにこの色分けは、高等部でもまったく一緒なので一見紛らわしいと思う人も多いようだが、微妙に色が違うし、中等部と高等部では体格も違う。なにより、中等部と高等部の校舎は大分距離があるので、間違えることは滅多にない。


 そんな青いネクタイを着けた知り合いでもない一年生に一斉に見つめられて、正直居心地が良いとは言えない状況だ。見せつけるようにアクセサリーを着けているところを見ると、おそらく俺を見ているのは中流、上流貴族の方々だろう。制服だけを身に着けている人も普通にいるが、そういう人たちは俺を一瞥するだけで教室に向かっている。

 何故、中流、上流貴族がこちらを見ているのか、俺は薄々感づいていた。やはり昨日の出来事で、俺は目立ちすぎたようだ。嫉妬、侮蔑、羨望、そんな感情が視線に込められているのが、肌にヒシヒシと伝わってきている。

 嫉妬と羨望はクロエ会長に目を付けられたことに対して、侮蔑は下流貴族のことに対してだろう。羨望は別に悪くはない、と思う人もいるだろうが、俺は不躾にジロジロと見られるのは嫌なのだ。できるならその羨望の眼差しは心の中だけにしてほしい。


 だが、視線だけならまだいい。問題なのは──────────



「勝負だ、下級貴族!」



 こうしてやたらに突っかかって来る奴等。こういう輩のせいで歩いて五分のはずの教室にまだ到着していない。ちなみにこれで五人目だ。

 あの勝負はクロエ会長に手加減してもらえたから戦えただけで、コイツはそんなに強くない。だがコイツに勝てばクロエ会長に認めてもらえるかもしれない。大方そんなことを考えながら俺に突っかかって来るのだろう。迷惑なことこの上ない。

 ある程度力を見せて弱くないことを証明するために、これまで突っかかって来た奴等は全員一発K.O.しているのだが、一向に突っかかって来る奴等の数が減らない。一体どうすればいいのだろうか。


 これから待ち構えているであろう面倒な出来事に頭を悩ませながら、一刻も早くこの状況を抜けたい一心で、あの四人が待つ教室へと走って行った俺であった。

順調に伸びてきている評価や初感想でほっこりしてます

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