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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
2章 少年期=学園生活
39/80

対クロエはパワフルの味

「求メルハ小サキ水ノ球=水球」

「求めるは小さき火の玉=火球」


 詠唱を唱えたのはほぼ同時だった。俺は詠唱を唱えなくても魔法を使えるが、無詠唱で魔法を使う、というのは即ち、妖精との一体化を意味する。そんなことをすれば目立つこと間違いなしなので、普段から詠唱は意味が無くても言うようにしたのだ。


 とても苦手には見えない綺麗な形をした水の球と、スピードのある火の玉が両者の中央で接触し、水の球は急な温度の上昇に耐え切れず蒸発、火の玉も水の球によって消化されてしまった。その二つの魔法と入れ替わるように、お互いの姿を隠す形で水蒸気が発生。それを確認すると同時に、俺はまっすぐクロエ会長の下へと駆けだした。

 周りの貴族たちはみんな揃って、信じられない、という顔をしていた。不得意とはいえ、年齢が一回り上の先輩の魔法を、あろうことか相性の悪い火の魔法で相殺したのだ。目を疑ったことだろう。


 そんなたくさんのアホ面を尻目に、俺は全速力でクロエ会長の下へと全力で駆ける。まっすぐ向かっているのはワザとだ。折角視界を奪ったのだ、奇襲をかけてくる、と思うのが定石。しかも相手は新入生。正攻法では負けない、と自負していることだろう。そしてそのことを俺が理解している、ということも考えているはずだ。ハンデを付けるぐらいだ、まず間違いなく先手は譲ってくれるだろうし、奇襲を警戒して左右に意識を巡らせながらも、立ち位置を変えることもおそらくない。


 水蒸気を抜けると、五メートルほど先に右を向いているクロエ会長が目に入った。やはり左右に意識が向いているようだ。俺はさらに速度を上げ、一気にクロエ会長の懐に潜り込んだ。流石にここまで来れば気付いたようだが、もう遅い。俺は全力で目の前にある腹に右ストレートを叩きこんだ。

 体重差はあるといっても、そこそこ鍛え上げられている男のパンチだ。体がくの字になることはないにしても、怯むくらいはあるだろう。その隙をついて魔法をゼロ距離で放ち、クロエ会長を気絶させてこの勝負は終わり。そんなプランが、頭の中には出来上がっていた。

 だが、現実は想像通りに進むほど甘くない。


「ふむ、思っていたよりも力があるな。これなら敢えて正面から向かうのも悪い手ではない」


 俺のプランは、筋肉一つであっさりと打ち砕かれた。クロエ会長の行った行動はシンプル。お腹に力を込める、これだけだ。つまり、腹筋で俺の拳を受け止めたのだ。俺は思わず、怯ませることはおろかお腹にある空気さえ出させるとこが出来なかったことに混乱してしまった。そして、今相対している相手は、そんな隙を見逃すほど甘い相手ではない。


 その攻撃を防げたのは、奇跡に近かった。クロエ会長は俺のこめかみに向けて強烈な打撃を加えようとしたようで、俺は咄嗟にその攻撃を腕で防いだ。防ぐことに成功しながらも、俺の体は打撃の衝撃で地面に叩きつけられ、さらに一メートル近くバウンドした。まるでハンマーで殴られたかのような衝撃だ。打撃を防いだ腕はきっと折れていることだろう。一体この人はどんな鍛え方をしてるんだ。

 そんな重い一撃を放ったにも関わらず、攻撃の手を止めることはしないようで、次に見たクロエ会長の姿は右腕を振り上げているところだった。たった一発で意識が揺れまくっているのだ。これを受ければ、たとえ防げたとしても意識はどこかに行ってしまうことだろう。


 だが俺は、負けたくなかった。生徒会に入りたくない、というのも一つの理由だが、何よりも俺は、負けず嫌いなのだ。そして、負けたくない一心で、俺の口は動いていた。


「求めるは火の雨=爆雨ばくう


 爆雨は中級魔法の中でも上位に位置する魔法だ。威力の割には覚えやすいので、火の中級魔法の代表格のような魔法だ。この魔法は比較的取得しやすいので、努力さえすれば大抵は覚えられる。そのため俺が使っても、特に目立ったりはしないため、俺が今人前で使える魔法の中での威力はトップレベルと言える。

 この魔法は自分を中心にして、半径五~十メートルほどの範囲の中に火の雨を降らせる魔法だ。その火の雨一つ一つはそれほど大きくないため、初めて見る時は油断しがちだが、この火の雨は使用者以外の体に触れると爆発する。その威力は強力で、生身で突っ込めば最悪死ぬこともある。なので、モロに効果範囲内にいるクロエ会長はかなりやばいのだが、おそらくこの人なら死にはしないことだろう。だが、気絶は確実にさせられる。これならいけるだろう。


 だが又しても、クロエ会長は想像の上を行った。撃ってきたのだ、普通に。魔法を気にすることなく、パンチを。こうなれば、もう俺になす術はなかった。俺は再度、ハンマーに殴られたかのような衝撃に襲われ、今度は意識を揺らすだけでは収まらず、意識を遙か彼方へと吹き飛ばされた。


 こうして、俺の短くも濃い勝負は幕を閉じた。

戦闘描写はやっぱり難しい…。誰かアドバイスをください

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