担任は怠惰の味
「にしてもお前変わったなー。前は大人しい優等生って感じだったのに。…もしかしてグレちゃいました?」
「んなわけあるか!てかなんでハイラは俺の事分かんなかったんだよ!ぶっ飛ばすぞ!」
「いやいやいや、さっき自分で分かったらイメチェンの意味ないって言ったばっかじゃん。何怒ってんの?あと声デカい」
「け、喧嘩はダメだよぅ…」
「…うむ、喧嘩は良くないな」
「ボクはハイラが変わり果てたラッツとフツーに会話してるのに驚きなんだけど」
寮の案内が終わって、今は教室に来ていた。教室内には他の生徒ももちろんいるが、そんなことはお構いなしにと、ラッツがでかい声を出しているせいで軽く注目を集めてしまっている。そのおかげで人前に立つのが苦手なミーシャは顔が真っ赤だった。その姿にちょっと萌えてしまったのは内緒だ。
ちなみに、俺たち五人組は見事に全員同じにクラスになった。作為的なモノがあるようにも思えたが特に気にしたりはしない。
俺とラッツが問題を起こし、ミーシャとダグラスが仲裁、ユリウスが話しを逸らす。一見すると手慣れたように見えるが、初等部ではありえない光景だった。
まず、問題を起こすことが無かったし、喧嘩なんかもほとんどなかった。ダグラスとユリウスがちょっとしたことで揉めたことは何度かあったが、基本的に俺ら五人は穏やかな性格だったために、すぐに収まるのが常だった。
こうした変化は、良い意味でも悪い意味でも成長しいた証だ。ラッツの変化は微妙だったが、そのかわりにダグラスが少し大人っぽくなっている。こうした変化は止めることが出来ないために受け入れるしかない。…俺がニートになった時も、親は受け入れることしかできなかった。その苦痛、少しでもここで味わえるなら、味わってやろうじゃないか。
そうこうしてる内に教師が来たようで、生徒たちは一斉に席に付いていく。生徒が全員席に座るのと、教師が扉を開けるのは同時だった。教室内に居るすべての人の注目が、昔からある伝統的な建物にもかかわらず綺麗なままな扉に集まる。誰もが担任になるであろう人物に興味をしめしている証拠だ。
五秒、十秒、と時間が過ぎていくが、誰も入ってくる気配がない。二十秒近く経って生徒が不審に思ったのか、教室内に話し声が聞こえ始める、と同時に扉から頭と首だけが入ってきた。
「やあ皆さんこんにちは。私が君たちの担任になるマグです。今日の授業は私の紹介と皆さんの交流でお終いです。交流するにあたっての注意事項なんかは教卓の中にある羊皮紙に書いてありますので、誰か前に貼っておいてください。今は、九時過ぎですね。では十時を過ぎた辺りで皆さんは帰宅してしまって構いません。それではこの辺で私は失礼します」
いきなり現れたと思ったら、言いたいことだけ言って風のように何処かへ行ってしまった。小奇麗な扉を見つめていても、担任が戻ってくることはなく、クラスは軽い混乱状態だ。
「事はなるべくスピーディに終える!中々いい先生じゃないか!」
「ボクにはただ説明をメンドくさがってるだけに見えたけどね」
そんな状況でも指示には従うことにした俺は、大人しく教卓の中にあった羊皮紙を前に張り付けるのだった。
作者も面倒なことは嫌いです




