中等部は社会の味
強奪事件から二年が経ち、俺は中等部に上がった。初等部の最後の二年は母上に無理を言って休んでいたので、少々母上はご立腹だ。なので中等部には普通に行く、と言ったら大層喜ばれた。こんな当たり前のことで喜んでもらえたのは嬉しかったが、それと同時に何か悲しくなった。当たり前のことも出来てない俺って一体何なのだろうか…。
中等部は長期の休みに帰省があるのと、二回目ということもあって出発の時はあまり湿っぽくはならなかったが、やはり寂しいものだ。
中等部は初等部と違い、平民も混じるようになる。数はそんなに多くなく、クラスも同じになることはないが、やはり貴族だけの時とは大きく違う。
平民は居ると、学校の中に小さな社会ができるのだ。ここで生徒は世の中がどのように回っているかを学ぶ。平民の生の声が聞ける、と有力貴族の中では評判だが、実際に学ぶのはまだ精神的には幼い中学生だ。初等部同様、イジメが大きな問題になっているようだ。処置としてクラスを分けてはいるが、それで完全にイジメが無くなっているわけではない。どの世界でもやはり問題はあるようだ。
中等部の授業は、主に戦闘だ。初等部の時に鍛えた基礎体力を存分に使うこととなる。主な授業内容はというと、実戦あるのみだ。
この世界はギルドというものがあり、そこには日々困った人たちからの依頼が殺到している。それこそペット捜索から魔物の討伐まで様々だ。だがギルド以外にも依頼を受け付けている所がある。それが中等部だ。依頼料がギルドよりもお安くなっているが、依頼を行うのはまだまだ未熟な子どもたちなので、依頼のランクが高ければ高いほど成功率がものすごい勢いで低くなっていく。なので集まってくるのは比較的簡単なものばかりだ。まあそれは都合がいいことなのだが。
政治に関しては母上に教わることになっているので、中等部で戦闘に関して学べるのは丁度よかったと言える。それに依頼も結構楽しみだったりするので、この中等部ではあんまり暇にならずに済みそうだ。
そう、暇にならずに済みそう。俺はそう思っていた。この言葉に誤りは無かったが、俺の期待していたものとは違っていた。
中等部初日。意気揚々と登校すると、さっそく目にしたのは、貴族に蹴られている平民の姿だった。いじめがあるとは聞いていたが、初日から見ることになるとは思いもしなかった。平民を蹴っている貴族をよく見ると、執拗に貴金属やらアクセサリーを付けている。おそらく、最近中流貴族か上流貴族に昇格した家の子どもだろう。言ってしまえば調子に乗っているのだ。
この学園には小さな社会ができる。世間から言われているこの言葉を、俺は履き違えていた。この言葉はこの学園で世の中の仕組みが学べる、なんて優しいものではない。この学園は鏡、世の中の本質をそっくりそのまま映す鏡だ。支配する側とされる側に分けられ、支配される側は普段どういう扱いをされているか、支配する側はされる側をどう扱っているか、支配する側の中でも更に上の立場の者たちはどのように対応するか。それらを『学ぶ』のではなく『叩きこまれる』、これがこの学園だ。
もちろん、俺もこの学園に通う以上、この暗黙のルールに適応しなくてはならない。俺は学園生活に期待しながらも、不安を抱えながらこの学園に通うこととなった。
世界が変わっても世の中の本質は変わらないものです




