視線は狂気の味
展開が速すぎて何が何だかさっぱりだが、助かったようなので一安心だ。しかし一安心なのはいいが、退室のタイミングが分からん。このままお辞儀でもして勝手に出て行っても良いのだろうか。
と思っていたら国王はまだ話したいことがあったようだ。
「そういや兵士たちの粗相の事をまだ謝ってなかったな。さきほどは本当に済まなかった」
国王が一介の、それも没落しかけている貴族に頭を下げた。頭を下げる、という行為はよく目にするが、それが国王ともなると話しは別。しかも相手が相手なので尚更だ。また室内にいる兵士たちが殺気立ってきた。自分たちのせいでこうなっていることを自覚してないんだろうか。まあ、自分とは次元が違う所にいる人に頭を下げられるというのは思ったより居心地が悪いので、止めるとしよう。
ふと横を見ると母上が、国王に頭を下げられているという事実に驚いているのかアタフタしていた。ちょっと和んだ。
「頭を上げてください、国王様。私たちは別に気にしていません」
「そう言ってくれるのは嬉しいが、それでは俺の気が済まん。………替わりと言ってはなんだが、一つお前の頼みを聞いてやろう。あまり無茶な要求は呑めんが、出来る限りのことはしてやるぞ」
…何か納得がいかない。これではまるで頭を下げた理由が、俺の望みを一つ聞き出そうとしているようだ。何か企んでいるんじゃなかろうか。とは言っても、ここで「何か企んでませんか?」と聞けば今度こそ首が飛びかねない。
ここは疑ってもしょうがないし、くれるというのなら素直に貰っておくことにしよう。
「それでは、父上の貴族権と母上の準貴族権を入れ替えては貰えませんか?」
ぞくり、と寒気が背中を駆け巡った。兵士の中に俺を敵視する奴でも出来たのかと思って周りを見回したが、特に変わったことはなく、兵士たちは列を乱さず綺麗に並んでいるままだ。
気のせいだろう。そう思い、また国王の方に向き直ると、国王は笑っていた。その顔には似合わない、微笑みのような笑みだったが、俺にはどこか獰猛さを感じさせる笑みだと思った。
そろそろこの章も大詰めの予感です




