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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
1章 幼少期=理想
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二度目は強運の味

 男たちに紙作りを任せてから二ヶ月が経った。


 結論から言うと、紙は作れた。日本で数えきれないほど見てきた紙とは質が違い、少し荒っぽいが紙としては十分役割を果たすことだろう。

 だが、不可解なことが幾つか浮かび上がってきた。まず、何故かこの世界に炭酸ソーダがあった。炭酸ソーダは紙を作る過程で必要になるのだが、化学製品なのでてっきり手に入らないだろうと思っていたのだ。日本に居た頃、世界史でミイラを作る際に使用していたのは知っていたが、ここにも運よくあるとは思いもよらなかった。まあお蔭で思ったよりも早く紙が出来たので良かったと言えばよかったのだが、これまた何故か炭酸ソーダはあるのに洗濯のりは無かった。作り方で言えば遙かに洗濯のりの方が作りやすいだろうに。現に、洗濯のりはこっちでも作れた。

 他にもここには無いだろうと思っていた品が幾つもあった。これは何かあるんじゃないだろうか。考えすぎか?


 確かに運が良かったと言えばそれまでなのだ。この世界の俺は運気が良いようだしな。この土地に生まれてきたのも運が良かったと言える。

 ここは近くに鉱山があったり、大きな湖や森林なんかも多いので、職人にはたまらない資源の宝庫なのだ。そのお蔭でここに集まる職人は純粋に物を作りたいという理由で来る人も多く、そして大抵そういう人達は作る以外の事に興味がない。なのでしっかりした報酬があれば情報を無暗に晒したりしないのだ。そしてそう言う人たちを集めて今回は紙作りをしたもちろん、紙作りの情報を漏れるのを防ぐためだ。職人とはいえど、やはり商売をしないと生活していけないのでお金を重視することが多く、そういう人の場合は情報が売れると分かるや否やすぐに晒してしまうので、今回は本当に運が良かった。

 父親はアレだが。



(炭酸ソーダの件もただ運が良かったのかもしれない。うまくやれたんだし、やたらに詮索するのはやめて気楽に行こうじゃないの)



 職人の報酬も紙の売り上げが見込めそうだったので、売り上げの一割でいい、と言われた。情報も隠しすと約束してくれた。紙が完成した日も行商人が来る日の予想とちょうど重なった。紙の量産も見込める。お金を返すこともおそらく出来るだろう。そうすれば母上は安心する。そう、すべてうまくいっている。難しく考えるのはその時になってからにしよう。


 そうして俺は、出来たてほやほやの紙を持って商人が集まる市場へと向かうのだった。

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