初手は尻拭いの味
俺は今お忍びで、町にある工場に来ていた。工場内には何人もの屈強な男たちが所狭しと並んでいる。工場も日本とは違い小ぢんまりとしているので、一人二人ならともかく、何人もガタイ男が居れば当然狭くなってしまうのだが、これからする話は外に漏れると困るので、仕方ないと言えば仕方ない。
この体育会系の中に一人場違いな俺は、屈強な男たちにビビりながらもとりあえず名乗ることにした。
「こんにちは、皆さん。私はハイラ・アースタックと言います。以後、お見知りおきを」
『アースタック』の名前が出た途端、男たちの目が人殺しのソレになった。正直、漏らしながらでも逃げ出したい気分だが、ここで逃げるわけにはいかない。
少しの間男たちの中で話し合いが行われ、俺の挨拶の返答はその話し合いで代表になったらしい、男たちの中で最も体の大きいスキンヘッドのおっさんがしてきた。
「あの守銭奴の息子か。それで、俺たちに何の用だ」
「要件を言う前に、皆さんには謝らなければならないことがあります。もちろんそれは父上のことです。これまで皆さんには、多大な迷惑をかけたと思います。重い税や身勝手な政策、これまで数多く不愉快な思いをされたでしょう。その件に関しては本当に申し訳ありませんでした。こんなことで許されるとは思っていません。ですが、今だけは力を貸して頂けないでしょうか?先日、父上が王都のお金を強奪しました。そのせいで私たちは多くの借金を背負うこととなりました。その上、父上はお金を支払うことを嫌がって逃げ出してしまい、今はどうすることも出来ない状態です。自業自得と笑ってもらっても構いません。ですが皆さんのお力があればなんとかできるんです。私はこれ以上母上に苦しい思いをしてほしくありません。どうかお願いします!母上を救うために力を貸してください!」
言い終わった後、俺は思いっ切り頭を下げた。
すると、降りかかってきたのは野太い声の罵詈騒音ではなく、幾分か穏やかになった優しい言葉だった。
「顔上げな、坊主。守銭奴の事も、謝るべきはお前じゃなくて本人がするべきことだし、お前は気にしなくていい。歳の割にはよく出来た奴じゃねぇか。母親の為に自分が出来ることをしようとする姿勢なんかも気に入った。いいぜ、坊主。力貸してやる」
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、再び俺は頭を下げた。
母上には自信満々に言ったが、ぶっちゃけここで許してもらえなかったら詰んでた。尻拭いの成功と詰まずに済んだことの二つの意味で安堵しながら、これからのことを話すために顔を上げた。
感想・レビューもお待ちしてます




