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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
1章 幼少期=理想
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ピンチはチャンスの味

 領主が逃げ出した。反乱なんかで逃げ出すならまだ分かるが、自分が犯した罪を償うための罰を嫌がって逃げ出すなんて、笑い話としてこれから何世代にも語り継がれることになるだろう。もちろん、取り残された方からしたらたまったものではない。

 メイドさん達のほとんどは見切りをつけて辞めて行ってしまった。残った使用人は爺やと初めて王都に行った時の引率の新人メイドさん、俺が学園に通っている間に新しく入った見習いメイドさん数人だけだ。今屋敷に残っているのは、俺や母上を合わせて十人もいない。これは誰が見ても没落寸前だ。


 実際、出て行ってはいないが母上は諦めてしまっているし、爺やもいつどうなってもいいように荷物を纏めている。残ってくれているメイドさん達も同情の面が大きい。

 元々没落しかけていたのに国に喧嘩を売り、許しを得るチャンスを与えられたのにも関わらず最も財政に詳しい領主が逃亡。この国の貴族は夫が、治めている土地の政策を決めているので、領主が居なくなってしまうとそっち方面に詳しい人が必然的に居なくなってしまう。つまり、打てる選択肢が極端に狭まってしまうのだ。これでは諦めざるを得ないだろう。


 だが、俺にとっては好都合だった。確かに経済や経営、政策に関しては知識が少ないが、今回必要なのは単純に金だ。金だけを稼ぐのだったら、この科学が進歩していない世界ならば左程難しくはない。問題は金の亡者である屑父上だが、その問題人物も今は居ない。



「母上、次に行商人が領地に来るののは何時頃になるのかと、王都にお金を払う期限はいつまでになりますか?」



 貴族が金を得ようとする時に取る行動は国に食料を納めて換わりにお金を貰う、というのが一般的だが、国に食料を納められるのは一定の期間内だけなので、今すぐに金を手に入れたい時に取る行動は商人に物を売ることだ。現に屑父上は、金が少なくなると高そうな品を持って商会に出掛けることがしばしばあった。つまり、今すぐ金を手に入れたい俺がとれる行動は、商人に対して商売をすること。

 

 だが今回は領地内に居る商人には頼らない。何故なら、今はどこに行ったか分からないが、屑父上が戻ってくる可能性があるのからだ。恐らく、俺が国に求められていた返済を終えてしばらくすると、平気な顔をして帰ってくるだろう。戻ってきた時にどうやって金を返したのか、と聞いてくるに違いない。俺が黙秘すれば、次に行くのは当然商会。そこで情報が流失すればまず間違いなく屑父上は同じ方法を使って金を儲けるだろう。それを防ぐために行商人を使う。行商人ならば常に移動しているので、俺が頼った行商人を見つけるのは困難なので、情報漏れの心配はほとんど無くなると言っていい。



「最近来たばかりだから次に行商人が来るのは、たぶん一ヶ月近く先だと思うけど。王都にお金を払う期限は二年までって言ってた。でもハイラ、そんなことを聞いてどうするの?」


「もちろんお金を得るためですよ、母上」



 行商人は大体一ヶ月周期。支払期限は二年。それだけあれば十分だ。


 ピンチとチャンスは裏表。とりあえず目標の親孝行として、困っている母上を助けるとしよう。

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