父親は腐敗の味
「ただいま帰りました。お久しぶりですね、母上。それでどんな状況ですか?」
実に四年近くの時間が経っての再会で話したいこともたくさんあったのだがここは我慢して、挨拶もそこそこに話しを進めることにした。
「おかえり、ハイラ。元気そうで何より。ごめんね、せっかく学校で楽しく過ごしていたでしょうに」
そう言うと母上は本当に申し訳なさそうに顔を伏せてしまった。母上にこんな事をさせた原因にはお灸を据えたほうが良さそうだ。今度会ったら髪でも燃やしてやろう。
「ついさっき王都から連絡があって、強奪した金に加えてファリス金貨百枚を支払えば、今回のことは水に流してくれるそうよ」
ファリス金貨というのはこの国で最も価値のある貨幣で、これ一枚で一ヶ月は遊んで暮らせるということなので、日本円に換算すると軽く見積もっても十万円ぐらいの価値はありそうだ。ということは、今回要求されている額は、約一千万。そんなの無理だろ。他にもファリス銀貨とファリス銅貨というものもあり、銀貨は約一万円、銅貨は百円くらいの価値があるみたいだ。
「ディールは王都に結構な量の食べ物を貢いでたみたいだから、おそらく王都は勿体ないと思ったんでしょうね。だからこんな処置になった。それは良かったのだけど…」
そこまで言って、母上は黙ってしまった。この先をことを言うのを躊躇ってるみたいだ。
ちなみに俺はディールって誰だっけ、と一瞬考えてしまった。文脈を見ればディールは父親と分かるが、俺は父上の名前なんか知りたくもなかったので、子どもの頃から忘れようと意識したおかげで本当に忘れてしまったようだ。なんとなく気分が良くなった。
そんなことを考えている内に覚悟が決まったようで、母上は苦虫を噛み潰したような顔をしてこう言い放った。
「ディールが支払いを嫌がって逃げ出したわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
俺が思っている以上に父上は腐っているみたいだ。
ようやく少しだけ話しを思いついてきました




