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世の中はどこまでも現実の味  作者: 鬼
1章 幼少期=理想
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王都は新鮮の味

 そして、ついに出発の時が来た。

 前日はちょっとした祭りとなり、結構盛り上がった。主に俺と母上と爺やが。それでもかなり楽しかった。料理はいつもと違いコックが作ってくれるのではなく、母上が作ってくれたのだ。料理はしばらくやってなかったそうで、お世辞にもうまいとは言えなかったが、お袋の味が知れただけで良しとしよう。爺やからは何とハンティングナイフを貰えた。最高級である爺やの物よりかは幾分か質は落ちるが、それでも子どもに持たせるのには十分すぎると言える代物だ。


 本当にこの二人には感謝してもしきれない。いつかこの恩は、最高の形で返せるようにしよう。屑父上には腹上死するように毎日お祈りしてやることにした。


 やはりと言うか何と言うか、移動は馬車だった。色々本を見ている限りでは、この世界は中世のようだったし予想はしていたが、まさか本当に乗ることになるとは思わなかった。お尻やら腰やらが痛くなると聞いたのであまり乗り気ではないが、贅沢は言ってられないだろう。


 持って行く荷物はそこまで多くならなかった。着衣と多少のお金、それと武器に昔貰ったモノ。この貰ったモノとは優秀な使用人がくれた物だ。持って行く理由は俺が居ない間に売られそうなのと、まだ使い道があるからだ。貰ったものは三つあり、その内の二つは固い箱に入っていて開けられなかったが、最後の一つは魔法に関しての本だった。この世界では紙が高価なので、この分厚い本を売ったら相当な金になるだろうが、この本のお蔭で魔法を全属性使えるようになったのでそんなことはしない。学校で魔法は教わるだろうが、有って損はしないだろう。


 いざ出発の時になると、やはり寂しいものだった。母上はすでに泣いているし、爺やは頭を下げっぱなしだ。おそらく泣いた顔を見られないようにするためだろう。そんな二人が堪らなく誇らしかった。人に優しく、人の為に頑張り、人の為に泣ける、この二人が。俺はまだそんな立派にはなっていない。なので、俺は決して泣かなかった。馬車が出て、屋敷が見えなくなっても決して。




          * * * * *




 王都に着くまでに二日かかった。お蔭でお尻は針に刺されているみたいに痛い。一緒に来た付添いのメイドさん(新人)は平気そうな顔をしていたのだが、乗っているときのコツみたいなのがあるのだろうか。


 道のりは長かったが、決して退屈ではなかった。景色は目まぐるしく変わっていたし、何より地球では見られなかった生物がたくさんいた。角の生えたうさぎや、ミニマムな熊、木が歩いていることもあった。途中で泊まった町も日本とはまったく違った建物ばかりで、興味が尽きることはなかった。退屈しないで済んだなら良いことだ。


 王都に着いて最初に目に付いたのが、町の中央にそびえ立つ立派な城だ。町の半分はその城ではないか、と思えるほどに大きかった。城下町もかなり大きく、途中で休憩を挿むために寄った町とは比べ物にならない。東京と同じように多くの人でごった返していたが、東京とはまた違った雰囲気で、かなり新鮮だと言える。


 この大きな町でこれから過ごすのかと思うと、胸が高まった。ここで頑張って過ごしていくとしよう。

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