親孝行は未来の味
ようやく主人公の名前が明らかに
目を覚ますと、徐々に見慣れてきた天井がそこにあった。
「おはよう、ハイラ。大丈夫?痛い所はない?」
すぐ横から声をかけられたので少し驚いた。頭だけを声のした方向に向けると、見知った顔の女性が心配そうにこちらを見ていた。
その女性は女神のように美しかった。
まず目に付いたのは、綺麗に整っている金色の長い髪の毛。毛一本一本がまるで宝石のようで、その宝石のような髪の毛は紐で纏められており、前に持ってきている。これだけで絵になること間違いなしだ。顔も髪に負けておらず、少したれ気味の目とほんのり丸い鼻、ツヤツヤした薄い唇が丁度良い比率で顔についている。この顔を見れば黄金比が分かるのではないか、と思うほどだ。肌もシミなどは一切見受けられず、どこまでも真っ白で、どこか儚い雰囲気をまとっている。
このベッピンさんが俺の母上、『レイラ・アースタック』だ。息子の俺が言うのもなんだが、とても一児の母とは見えない。
「アーデルが真っ青な顔して私を呼びに来たときは心臓が止まりそうになったけれど、その様子だと大丈夫そうね。だけどよく聞いて、ハイラ。たとえ男の子でもあなたは子どもなんだから、体を鍛えるのはいいけど無茶しちゃダメ。分かった?」
「はい、母上」
そう俺が返事をすると、母上は愛おしそうに俺の顔を撫でた。本当にあの屑父上には勿体ない、俺は改めてそう思った。
この人は容姿だけでなく、心も美しいのだ。使用人がミスをしても決して怒らず、屑父上の汚名を返上しようと奮闘したり、俺が物心つく前、悪戯をしても微笑んで許してくれた。そんな人だけれど、怒るときは怒るのだ。俺の悪戯で洒落にならないことをしてしまった時はキチンと怒っていたし、屑父上が領民から金を巻き上げようとしていた時は激怒していた。
この人は、甘いのではなく優しい。
俺はこの世界に来て、幾つか目標を持った。その内の一つが生前に全然できなかった親孝行。
実は、爺やの全力の蹴りを食らって大事にならなかった理由は、母上に貰ったナイフのお蔭なのだ。太ももの横の辺りに括り付けておいたのだが、そのナイフに宿っていた加護が『守護の加護』と呼ばれるもので、あらゆる攻撃から身を守ってくれる。だから俺は怪我をしなかったのだ。
こういった恩と一緒に、いつかこんな汚れた家から救いだし、目いっぱい孝行する。いつになるかは分からないが、絶対にやる、と改めて心に誓った。
ちなみにアーデルは爺やのことです




