第二話 この悲惨な事件に解決を。:始
突然だが、この世界には〝能力〟が存在する。初出は56年前、西暦1970年だ。
それ以降、日本政府は西暦1970年以降を
「A.C.0年(=Ability century.0)」とした上で〝能力法〟なる法律を定め、能力悪用による犯罪や、事故を減らすために尽力している。
……一つ訂正する。どうやら、能力があるのは日本だけのようだ。
———これが、神様の悪戯なのか、はたまた、まだ誰も知らないだけなのかは、一人間には分からないことである。
✕ ✕ ✕
私の名前は織田 絢乃。A.C.28年5月10日生まれの28歳だ。
現在、神奈川県横浜市の北部にて、怪事件調査を専門とする探偵を営んでいる。
能力は《超記憶》。簡単に言えば、〝重要だと選定した情報は何があっても忘れない〟というもの。私的には、探偵に向いてるものだと思う。
余談だが、私は喋り方や髪型、声の低さが災いして、男と間違えられることがよくある。まぁ、「かっこいい」と言われるのは、満更でもないのだが。
昨日、元栃木県警捜査一課長である陽川 夕太からの依頼を正式に受けた私たちは、二手に分かれ、捜査を進めている。
助手の木之葉 楓は、依頼の事件現場である栃木県の病院に聞き込みへ行った。
一方私は、藍に会うため、神奈川県平塚市にある行きつけだった喫茶店へと来ている。
「ふぅ、ここに来るのも久しぶりだな…」
懐かしい喫茶店の内装を眺めながら感傷に浸っていると、どこからともなく、聞き慣れた明るい声が聞こえた。
「おーい!あ〜やの〜!」
「よ、藍」
「久しぶりだね〜♪」
「ああ、1年ぶりだ。」
彼女が藍。本名を康國 藍という。ここ、平塚のとある中高一貫校で、中等部担任と能力実技科の教師を務める、私の親友だ。
能力実技科の教員採用試験は、身体能力が物を言うため、中高共に壊滅的に厳しい。ここ最近は、教師による能力犯罪が増加しているためか、合格率が3%以下まで下がっているそうだ。
ちなみに、藍は2つとも一発合格している。
まぁ要は、物凄くすごい奴なのだ。
「ねえねえ絢乃、聞きたいことってなぁに?」
「いきなりか…普通は世間話から始めるもんだよ?」
「ありゃ、そうだっけ?」
「……ま、君はそういう奴だもんな。」
「?」
上手く聞き取れなかったのか、藍は首を傾げた。
「気にすんな、独り言だ。」
「そっか」
「それよか話。今、A.C.43年に、栃木で起きた怪事件について調べてるんだけど、なにか知らない?」
「う〜ん…その年の怪事件って言ったら一つしか無いけど…栃木じゃないよ?」
「そうだよなぁ…え、他に有ったの!?」
「あるよ、山梨で発見された《不自然な白骨死体》の話がね(-ω☆)キラリ」
(おいおい…まさかここに来て新たな怪事件に出会えるとは…最高じゃないか!!!!)
言い忘れていたが、私はかなりの怪事件オタクなのだ。自分で言うのも何だか、怪事件には目がない。もちろん、聞いたことのない話であれば、食いつかないわけがない。
「その話、ぜひ聴かせてくれ!!」
・・・30分後・・・
話が終わり、私は今、藍を色々と質問攻めにしている。
彼女の話を要約すると、「山梨県・生藤山のハイキングコースで白骨死体が発見され、山梨県警の調査により下顎や犬歯の異常な発達が確認された。しかし、その身元や関与した犯人は未だ判明していない。」というものだ。
「最後の質問。異様に発達した下顎と犬歯っていうのは、硬い肉でも噛み千切れるほどに?」
「当時の鑑識の人は、『顎の筋肉にもよるけど、少なくとも人の肉くらいなら可能ではある』って」
(人肉なら噛み千切れる……!?)
(栃木の事件で、犯人は被害者の腕を喰っていた…もし白骨化させた犯人が、栃木の犯人一家も誘拐していたとしたら……?)
僕は机を叩きながら勢いよく立ち上がり、目を見開いて言った。
「見えた!!藍、その事件と今僕が追ってる事件、関係があるかもしれない!!!」
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「陽川によると、被害者に能力が使われた痕跡はなかった。つまり、犯人は能力を使っていない。そして何よりも大変なのが、今関東近郊で発生している〝眼球が赤黒くなる病気〟に似ていることだ。」
事前に陽川の許可を得ていたため、私は依頼内容のすべてを藍に明かした。
「似ているっていうのは、犯人一家のこと?」
「ああ。というか、共通点だね。」
藍が目だけで続きを促す。私はそれに答えるようにメガネを光らせ、そのまま口を開いた。
「病気の患者と、犯人一家は全員、ほぼ同じ時期に失踪している。」
「藍、これは知ってるな?「A.C.33年は、関東圏内での行方不明者届…当時は捜索願か。その提出が異様に多くなっている。」って奴」
「うん。この界隈では比較的有名な話だよね〜」
「アレらに書かれてた人たち、ほとんどがこの病気になってるんだ。」
犯人一家も例外ではない。陽川は、一家を見た時に確信したそうだ。事件のちょうど10年前に、自身が受理した捜索願の対象だったと。
「つまり、患者たちは、何者かに誘拐・拉致監禁され、その年に何かを受け、その副作用・後遺症が発現したと考えられるわけだ」
「その、犯人と〝なにか〟が分からないといけないんじゃないの?」
「そこで、さっきの不自然な白骨死体だ。」
私は、陽川から預かった資料を広げ、藍に見せる。
「おそらく、遺体の身元はこれで合ってるはず。彼の名前は《青山景斗》。山梨県上野原市の市街地に一人で住んでいたが、発見されるちょうど10年前——A.C.33年に失踪している。陽川曰く、上野原で出された捜索願は彼の分のみだったと。まあ、要するに、この線から探れば犯人がわかるってことだね」
「なるほど。つまり私に類似事件を探ってほしいってコト?」
「その通り!よく分かったな」
その問いに、私は指を鳴らして答える。藍はそれを聞いて、呆れたように言った。
「何年の付き合いだと思ってんの〜?伊達に幼馴染してないんだから。」
「そりゃそうか。」
ふと、藍が時計を見た。
「うそ!?会ってからもう一時間半経ってる!?」
「ほんと?そしたら私は帰るよ。今日は助かった。」
対し、私はそう言って立ち上がる。藍は、残っていた自分のミルクティーを飲みながら答えた。
「りょーかい♪またね〜」
「……じゃ、頼むよ」
そう言い残した私に、藍は声をかける。
「もう、無理しないでね」
その言葉に、私は立ち止まった。だが、また歩き出し、返事をする。
「ああ、分かったよ。」
私は、そのまま店を後にした。
✕ ✕ ✕
〈理事長への取材、終わったぞ。だいぶいい情報がもらえた。
……所長、メッセージ見たら返信頼む〉
第二話:end.
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!
作者のKen(仮)です。
さあ、外伝作品のくせに第二話が投稿されてしまいました。
そろそろ本編の方も投稿しようと思います。(いつになる事やら)
さて、本題に戻して。
今回の話は、一話終盤にて絢乃が言っていた、「藍」という人物に会うため、平塚市までやってきました。
絢乃と藍のことが少し分かった回だったかな〜?と思います。(説明の話が少し長かったのと、冒頭が唐突すぎるのは多めに見てください)
次回は楓に焦点を当てた話となります!
楓は「理事長」に、どんなことを聞いてきたのでしょうか…
この話を書く上で、様々な方に添削・アドバイスを頂きました。
許可をいただいていないので名前は載せられないのですが、この場を借りてお礼をさせていただきます。
本当にありがとうございました!
ちなみに、第二話のタイトルは、暁なつめ先生の「この素晴らしい世界に祝福を!」と言う作品を参考に、付けさせていただきました。(最後の「始」は「はじめ」と読みます。)
という感じで、あとがきはこの辺で終わりにさせていただきます。
それでは、次回も楽しみに!!




