アレンジパン制作コンテスト
冬がやって来た。
雪。地面に落ちてはス〜ッッと消える。
なんだか、…寂しい。
あの日以来、母との会話は切れ、目も合わせてくれない。無理矢理話をしようとすれば、
「じゃあ、なんて言えばいいの!?さっきからあれこれ言ってくるけど、それじゃ、なんて言えばあかりは納得する!?自分ばっかり辛い思いをしてるなんて思うんじゃないの!!」
……ギャクギレ。
「はぁ…。」
「それでは、各自ちゃんとプリントを見ておくように。」
ハッ。もう授業終わったんだ。『ケーキミックス適合パンの作り方』?…やっべ。聞いてなかったし。まあ、後で優花に聞いておきますか。
ところでプリントには、『アレンジパン制作コンテスト』
と、書いてあった。
数日後。
「あかりおめでとう。」
「おめでとう。」
「おめでとう!!」
おめでとう、おめでとうと言われたからって、
「ありがとう。」
とは言えない。
それが身に覚えのないことなら、尚更だ。
「あの…何のこと?」
「んも〜!!とぼけちゃって〜〜(笑)」
私は優花に背中をバンバン叩かれ、漫画の如く目が飛び出そうになった。
「…とぼけてないんだけど。」
「え〜ッッ!?この前先生からプリントもらって説明うけたじゃーん。…あ。もしかして、寝てた?」
うーん…。どうだろ。
私は記憶をさかのぼってみたが、どこまで行っても、見つからなかった。ていうことは、寝てたか、考え事。まいっか。
「あかり?おーい。あかり?ダメだ。ついに逝っちゃったか。」
逝?
「もー。何のことよう。もったいぶらずに早くいって〜!!」
わざとぶりっコしてみた。
「キーモーイー!あかりが、アレンジパン制作コンテストの出場者に選ばれたってこと!名誉なことだよぉ!何せ、学校から3人しか出ないんだから。」
「…へぇ。」
「へぇって…。嬉しくないの!?コンテストで優勝したら、ガッコの顔だよぉ!んーと、あとの2人は三年の川柳先輩と、
あの光ちゃんだよ。緊張感ないのかよ。…あ!わかった!妹とバトル目前だから、血脇肉踊るってやつッスかぁ!?」
「!?」
ひ…光も出るの!?
そのとき私は底知れぬ不安を感じたのです。




