第10章9節:夜空の奇跡とマナの囁き
星々への思索に耽っていると、夜空の一角が、ふわりと淡い緑色の光を帯びたのに気づいた。
オーロラか?
いや、おそらくこの緯度で見られる現象ではないはずだ。光はゆっくりと形を変え、まるで天女の羽衣のように夜空をたなびいている。時折、流れ星のような閃光がその中を走り抜ける。
「……これは、なんという現象だ?」
私は即座に立ち上がり、その光景を詳細に観察し始めた。色、形状、動き、明るさの変化。私の知識データベースには、該当する天文現象も気象現象も存在しない。
まさか……マナの影響か? 大気中の高濃度マナが、宇宙線か何かと反応して発光している? あるいは、この世界独自の、未知の自然現象なのか?
私は急いで小屋に戻り、記録用の木の板と炭を取ってくると、記憶と観察に基づいて、その光の様子をスケッチし、気づいた特徴を書き留めていった。それはまさに、フィールドワークそのものだ。
光は数分間続いた後、ゆっくりと消えていった。まるで幻でも見ていたかのような、不思議な感覚が残る。
「……解明すべき謎が、また一つ増えたな」
だが、奇妙なことに、先ほどまでの思考の行き詰まり感は、この予期せぬ現象への興奮によって、いくらか和らいでいるのを感じた。
未知の現象は、常に新たな問いを提示し、停滞した思考に刺激を与えてくれる。これもまた、研究の醍醐味の一つだ。私は夜空を見上げ、まだ見ぬ世界の神秘に思いを馳せた。




