第10章8節: 問いかける悠久
煮詰まった思考をリセットするため、私は夜、小屋の外へ出て、空を見上げた。アッシュウッドの村の夜空は、前世で見たどんな空よりも美しく、澄み渡っていた。人工的な光害が全くないため、無数の星々が、まるで宝石を撒き散らしたかのように、漆黒のキャンバスに輝いている。天の川も、くっきりとその流れを見せていた。
私は芝生の上に寝転び、ただぼんやりと星空を眺めた。恒星の光、惑星の運行、銀河の渦。前世で学んだ宇宙の知識が、頭の中で蘇る。
この広大な宇宙の中で、地球という星があり、そこに私が生まれ、生きて、そして死んだ。そして今、私はこの異世界の、エルフという存在として、再びこの星空を見上げている。
なぜ、私はここにいるのだろうか?
転生。
その現象自体が、私の理解を超えた、この宇宙の法則の一部なのだろうか? それとも、何か特別な意味があるのか? 私がこの世界に転生したのは、何らかの目的を果たすため? 例えば、失われた食文化を再生するため? あるいは、「食の災厄」の謎を解き明かすため?
いや、それはあまりにも人間中心的な、傲慢な考え方かもしれん。宇宙のスケールから見れば、私の存在など、取るに足らない塵芥のようなものだ。転生に、大した意味などないのかもしれない。単なる偶然、あるいは未知の自然現象の結果に過ぎないのかもしれない。
答えは、ない。
少なくとも、今の私には見つけられない。
だが、《《問い続けることはできる》》。
私はなぜ生まれたのか。なぜ生きるのか。
そして、死んだ後、どうなるのか。
前世でも、多くの哲学者たちが挑み、そして明確な答えを得られなかった問い。
それを、この異世界で、エルフとして、《《再び問い続ける》》。
それ自体が、私の存在意義なのかもしれない。




