第10章6節: 小さな命と手の温もり
研究に行き詰まりを感じ、気分転換のために小屋の外へ出た。森の新鮮な空気を吸い込み、思考を整理しようとしたその時、バサリ、と軽い音を立てて、何かが私の足元に落ちてきた。
見ると、それは羽を痛めたらしい小さな小鳥だった。か細い声で鳴き、苦しそうに体を震わせている。翼の付け根あたりから、僅かに出血も見られる。おそらく、何かに襲われたか、あるいは木から落ちた際に打ち付けたのだろう。
私は屈み込み、そっと小鳥を観察した。骨折はしていないようだ。傷も深くない。だが、このまま放置すれば、他の動物に襲われるか、衰弱して死んでしまうだろう。
「……仕方ないな」
私は小屋に戻り、清潔な布と、薬効のある植物(止血と軽い殺菌作用を持つもの)を少量すり潰したものを持ってきた。
そして、震える小鳥を手のひらに優しく乗せ、傷口を丁寧に洗浄し、薬草を塗りつけ、小さな布でそっと翼を固定するように包帯を施した。
手当ての間、小鳥は驚くほどおとなしくしていた。私の手の温もりと、害意のないことを感じ取ったのかもしれない。
手当てを終えた小鳥を、近くの木の枝の、安全そうな場所へそっと戻してやる。小鳥は一度だけ、私の方を振り返るように小さな頭を傾け、そして木の葉の茂みの中へと消えていった。
ほんの束の間の出来事だったが、私の心には奇妙な温かさが残っていた。
生命の仕組みは、種が違えど共通する部分が多い。
傷つき、弱り、休み、そして回復していくプロセス。
その脆さと、同時に持つ逞しさ。
これもまた、私の探求すべきテーマの一つなのかもしれない。手のひらに残る、小さな命の温もりを感じながら、私は再び森の空気を深く吸い込んだ。




