第10章4節: マナというエネルギー
ジェイドの騒動の後、私は再び思考をマナへと戻した。この世界の魔法の根源とされるエネルギー。文献によれば、それは大気中にも、大地にも、そして生物の体内にも宿っているという。魔法使いは、自身の体内のマナ、あるいは外部のマナを取り込み、制御することで魔法を発動させる。
私は自身の身体に意識を集中させてみた。エルフはマナ親和性が高い種族だと聞く。……確かに、体内に何か、温かく流動的なエネルギーのようなものを感じる。これがマナか。意識的にこれを操作することで、魔法が発動する。
では、このマナの正体は? 前世の物理学で説明できるだろうか? 電磁気力、強い力、弱い力、重力……いずれとも異なる性質を持っているように思える。あるいは、未知の素粒子か、場のエネルギーか?
私は小屋の周りの空間のマナ濃度を、感覚的に測定しようと試みた。日中と夜間、晴天時と雨天時、場所によっても微妙に濃度が異なるようだ。特に、森の奥深くや、古い遺跡のような場所では、濃度が高い傾向にあるらしい。
もし、「食の災厄」がマナの暴走・汚染によるものだとしたら? 高濃度のマナ環境下で、特定の調理法(魔法利用含む)を行うことが、危険な反応を引き起こしたのではないか?
例えば、マナが触媒のように作用し、食材中の特定の成分を毒性物質に変化させる? あるいは、マナエネルギーそのものが食材に過剰に蓄積され、それを摂取した生物の精神や身体に異常をきたす?
仮説はいくらでも立てられる。
だが、検証手段がない。
マナを定量的に測定する機器も、その化学的・物理的な性質を分析する設備もない。今はただ、間接的な情報と、自身の感覚、そして推論に頼るしかない。
この世界の根幹を成すであろうマナというエネルギー。その理解こそが、魔法と「食の災厄」の謎を解く鍵となるだろう。これは、長期的な研究テーマになりそうだ。




