第10章3節: 招かれざる訪問者
魔法の実験に集中していると、不意に小屋の扉が乱暴に叩かれた。思考を中断され、私は若干の不快感を覚えながら扉を開ける。
そこに立っていたのは、狩人のジェイドだった。その手には、奇妙な斑模様のキノコが数本握られている。
「よ、よう、ハルカ……いや、ハルカさん」
ジェイドはどこかバツが悪そうな、それでいて切羽詰まったような表情で私を見ている。宴の後、彼が私に直接話しかけてくるのは初めてだ。
「何か用かね?」
「あ、いや、その……森でキノコ採ってきたんだが、これ、見たことねえ奴でよ。もしかして、アンタなら分かるかと思って……食えるのか、これ?」
差し出されたキノコを一瞥し、私は即座に断定した。
「それは『ワライダケ』に酷似した特徴を持つ猛毒キノコだ。摂取すれば、神経系に異常をきたし、最悪の場合、死に至る。食用は絶対に不可能だ。すぐに処分するように」
私の淀みない説明に、ジェイドは顔面蒼白になった。
「も、猛毒!? あ、危ねえ……! そうか、やっぱり毒だったか……。あ、ありがとうよ、助かった!」
ジェイドは慌ててキノコを投げ捨てると、どこか尊敬の念が混じったような目で私を一瞬見て、そそくさと立ち去っていった。
私はその後ろ姿を見送りながら、ため息をついた。
「やれやれ、村人たちの知識レベルの低さは依然として問題だな。毒物に関する基礎的な教育も必要かもしれん」
面倒事がまた増える予感に、私の眉間の皺が深くなった。だが同時に、私の知識が直接的に人命を救った(かもしれない)という事実に、ほんの少しだけ、奇妙な満足感を覚えたのも確かだった。




