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第9章2節: 盛大なる宴、戸惑う聖女
私が馬車から降り立つと、村人たちからワッと歓声が上がった。そして、ボルガンが前に進み出て、力強く宣言した。
「ハルカ殿、ご帰還、誠にご苦労であった! 辺境伯家のお嬢様を救われたという話、我々の耳にも届いておる! まさに聖女様の偉業! 今宵は、ハルカ殿の帰還と偉業を祝し、村を挙げて宴を開く!」
宴?
私のために?
聞いていないぞ。
私はただ静かに研究に戻りたかっただけなのだが。
広場には既に、長いテーブルがいくつも並べられ、料理や飲み物が準備され始めていた。村人たちは皆、晴れやかな顔で私を見ている。その目には、純粋な喜びと感謝、そしてやはり「聖女様」への崇敬の色が濃い。
「さあ、ハルカ様、こちらへ!」
リリアに手を引かれ、私は戸惑いながらも宴の中心席へと案内された。周囲からは「ハルカ様!」「聖女様、ありがとう!」といった声が次々とかかる。差し出される杯(木製だが)には、なみなみと酒が注がれていく。
断る隙も、逃げる隙もない。私は完全に、この歓迎ムードに飲み込まれてしまっていた。辺境伯の館での緊張感から解放されたばかりだというのに、今度は別の種類の喧騒に包まれている。
やれやれ、だ。




