第8章6節: 館の書庫へ
アリアが語った「食の禁忌」と「滅びた文明」の話。
これは、単なる一家庭教師の歪んだ思想として片付けるには、あまりにも示唆的だった。私は、この館にある書庫を調査する必要があると感じた。もしかしたら、そこに何か手がかりが残されているかもしれない。
私は辺境伯に許可を取り、グレイアムの案内で館の書庫へと向かった。書庫は館の奥まった場所にあり、重厚な扉で閉ざされていた。中は広く、壁一面に高い書架が並び、膨大な数の書物が収められている。しかし、管理状態はあまり良くないようで、埃っぽく、かび臭い匂いがした。
「辺境伯家は古い家柄でしてな。代々の当主が集めた書物がここに……。しかし、最近はアリア様のこともあり、手入れが行き届いておりませんで」
グレイアムが申し訳なさそうに言う。
「構わん。それより、歴史書や、古代の伝承、あるいは宗教関連の書物を探したいのだが、どこにあるか見当はつくかね?」
「さようでございますな……あちらの区画に、古い時代の記録がまとめられていたかと」
グレイアムに案内された一角には、特に古びた羊皮紙の巻物や、革装丁の分厚い書物が並んでいた。中には、私が知らない古代文字で書かれているものもある。解読には骨が折れそうだ。
私はランプの灯りを頼りに、書物を一つ一つ手に取り、内容を確認し始めた。辺境伯領の歴史、王国の成り立ち、近隣諸国との関係、紋章学、魔法理論……様々な知識が記されている。これ自体、貴重な情報源だ。
そして、数時間後。私はついに、探していた情報に繋がる可能性のある記述を見つけ出した。それは、非常に古い、出所不明の伝承をまとめた書物の中にあった。




