第8章2節: ハルカのカウンセリング(試行錯誤中)
アリアの僅かな好奇心の反応を逃さず、私は「カウンセリング」とも呼ぶべきアプローチを開始した。もちろん、私は心理学の専門家ではない。だが、前世での哲学者としての経験、そして何より、科学者としての客観的な観察力と分析力、論理的思考力が、この試みにおいて役立つはずだと考えた。
まずは、彼女の興味を引きそうな話題を提供することから始めた。簡単な化学実験――例えば、酸性の果汁とアルカリ性の灰汁を使って色の変化を見せる、あるいは、砂糖水の濃度を変えて結晶化の様子を観察するなど――は、アリアの知的好奇心を刺激したようだ。最初は遠巻きに見ていただけだったが、次第に「どうしてそうなるの?」と質問してくるようになった。
夜には、部屋の窓から見える星空について話して聞かせた。恒星と惑星の違い、星座の成り立ち(この世界の星座は私の知るものとは異なるが、基本的な天文学の知識は応用できる)、宇宙の広大さ。アリアは、私の話を食い入るように聞いていた。
「星って、あんなにたくさん……ずっと遠くにあるのですね」
「そうだ。我々の想像を絶するほど、遠く、そして広大なのだ」
これらの対話を通じて、私はアリアの思考パターンや感受性を観察し、彼女が何に興味を持ち、何に心を動かされるのかを探っていった。直接的に悩みを聞き出すのではなく、安全で知的な刺激を与えながら、彼女自身が内面と向き合うきっかけを作ることを目指した。
だが、効果は一進一退だった。興味を示し、笑顔を見せる時間が増えた一方で、ふとした瞬間に、また深い物思いに沈んでしまうこともある。無理強いはできない。焦らず、根気強く、彼女のペースに合わせていくしかない。私は科学実験と同じように、様々なアプローチを試行錯誤しながら、最適な方法を探り続けた。




