第7章9節: 治療計画の浸透
料理長と侍女頭を(半ば強制的に)納得させたことで、館内での私の治療計画への抵抗は急速に沈静化した。グレイアムの厳しい監督も功を奏し、厨房の衛生管理は改善され、アリアのための栄養食は私の指示通りに作られるようになった。部屋の環境改善も、滞りなく実施されるようになった。
変化は、アリアの食事内容にも及んだ。栄養スープで胃腸が慣れてきたのを見計らい、私は徐々に固形物を取り入れたメニューへと移行させていった。
消化の良い白身魚(これも魔法で臭みを取り、丁寧に蒸し上げたもの)や、柔らかく煮込んだ鶏肉。野菜も、単なる茹で野菜ではなく、すり潰してポタージュにしたり、細かく刻んで卵(これも栄養価が高い)と混ぜて蒸したりと、調理法に工夫を凝らした。味付けも、塩分は控えめにしつつ、ハーブや少量の香辛料、そして自作の発酵調味料などを使い、単調にならないように配慮した。
これらの食事は、最初は戸惑いを見せていたアリアも、次第に「美味しい」と感じるようになったようだ。食べる量も目に見えて増え、時には「次はどんなものが出てくるの?」と尋ねてくることさえあった。
食事の変化と環境改善は、確実にアリアの身体に良い影響を与えていた。顔色はさらに良くなり、体力も少しずつ回復してきているのが見て取れる。ベッドの上で過ごす時間は依然として長いが、起き上がって窓の外を眺めたり、侍女が持ってきた本を(読むというよりは)ぼんやりと眺めたりする時間が増えてきた。
館の使用人たちの間でも、「ハルカ様のやり方は、最初は驚いたが、確かにお嬢様は良くなられている」「あの食事は、我々が食べても美味しい」といった声が聞かれるようになり、私の治療計画は、館全体に徐々に受け入れられ、浸透し始めていた。




