第7章7節: 反発と抵抗
アリアに良い変化が見られ始めた一方で、私の「治療計画」に対する館内部からの反発や抵抗も、徐々に表面化し始めていた。特に、厨房の料理人たちと、一部の古参の侍女たちからだ。
料理人たちは、私の指示する調理法――長時間煮込む、アクを丁寧に取る、塩分を控える、香辛料を(彼らにとっては)奇妙な組み合わせで使う――に、不満を募らせていた。
「こんなものは料理ではない」
「時間がかかりすぎる」
「味が薄い」
「所詮エルフの浅知恵だ」
と、陰で囁いているのを私は知っていた。
彼らにとって、私のやり方は、自分たちの経験とプライドを否定するものに感じられたのだろう。
古参の侍女たちの中にも、私の環境改善策――頻繁な換気、日光を入れること、清潔の徹底――に対して、「アリア様のお身体に障る」「寒すぎる」「余計な手間だ」と不満を漏らす者がいた。彼女たちは、長年仕えてきた経験則と、アリアへの(歪んだ形かもしれない)気遣いから、私の「新しいやり方」に抵抗を感じていたのだ。
これらの反発は、些細なサボタージュや、指示の無視といった形で現れ始めた。厨房での清掃が疎かになったり、アリアの部屋の換気が忘れられていたり。
「グレイアム、状況を把握しているかね?」
私は執事長であるグレイアムを呼び出し、単刀直入に尋ねた。彼は渋い顔で頷いた。
「……申し訳ありません、ハルカ様。私の監督不行き届きです。古くから仕える者たちの中には、新しいやり方を受け入れ難い者もおりますようで……」
「彼らの感情は理解できなくもない。だが、アリア嬢の回復のためには、計画の徹底が必要だ。抵抗する者には、それ相応の対処を考えねばならんな」
私は冷静に告げた。
このままでは、せっかく見え始めた回復の兆しが、頓挫しかねない。何らかの形で、彼らを納得させる必要があった。




