表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生エルフの天才美少女科学者、料理概念ゼロの世界で家庭料理無双始めました ~研究に集中したいだけなのに、飯テロ聖女と勘違いされて困ってます~  作者: 藍埜佑
第7章:ハルカ式治療計画:食事と環境の再構築

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/281

第7章4節: 初めての“まともな”食事

 アリアの部屋へ栄養スープを運ぶと、彼女は相変わらずベッドの上で虚ろな表情を浮かべていた。侍女が「お食事の時間です、アリア様」と声をかけるが、アリアは力なく首を横に振るだけだ。


「……いらない」


 食欲がないのだろう。

 あるいは、これまで出されてきた食事が、彼女にとって苦痛でしかなかったのかもしれない。


 私は侍女に下がるよう合図し、ベッドの傍らに椅子を置いて腰掛けた。そして、スープの入った器を手に取り、アリアに向かって静かに語りかけた。


「アリア嬢、これは私が君のために特別に作ったものだ。薬ではない。ただのスープだ。だが、君の今の身体に必要な栄養が、消化しやすい形で入っている」


 アリアは反応を示さない。


「無理にとは言わん。だが、一口だけでも試してみてはどうだろうか。もしかしたら、少しは気分が良くなるかもしれん」


 私はスプーンでスープを少量すくい、アリアの口元へとゆっくりと差し出した。優しい鶏と野菜の香りが、アリアの鼻腔をくすぐったのだろうか。彼女の瞼が、ぴくりと動いた。そして、ためらうように、ほんの少しだけ口を開けた。


 私は慎重に、スープを彼女の口へと運んだ。アリアはゆっくりとそれを嚥下する。その表情に、大きな変化はない。だが、拒絶もしなかった。


 私はもう一口、同じようにスープを運んだ。アリアは、今度もそれを受け入れた。三口、四口……。無言のまま、アリアは私が差し出すスープを、少しずつだが、確実に飲み込んでいく。


 器の半分ほどを飲み終えたところで、アリアは小さく息をつき、再び目を閉じた。だが、その表情は、先ほどまでの完全な無気力状態とは、少しだけ違って見えた。ほんの僅かに、血の気が戻ったような……そんな気がした。


「……今日は、これくらいでいいだろう」


 私は静かに呟き、残りのスープを片付けた。大きな進展ではない。だが、拒絶されなかったこと、そして、ほんの僅かでも栄養を摂取できたことは、確かな一歩だ。焦りは禁物だ。根気強く続けていくしかない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ