第6章6節: 原因究明への糸口
初期診察と環境調査、そして聞き取り調査の結果を統合し、私はアリアの病状に関する原因仮説を絞り込み始めた。
未知の病原体や特殊な毒物といった線は、可能性としては低いと判断した。それならば、これまでの医師や魔法使いが何らかの手がかりを掴んでいてもおかしくない。彼らが見落とした、あるいは軽視した要因があるはずだ。
最も可能性が高いのは、やはり「慢性的な栄養失調」だろう。
この世界の絶望的な食文化レベルを考えれば、必須ビタミン、ミネラル、あるいは特定のタンパク質や脂肪酸が、長期間にわたって不足していた可能性は極めて高い。それが免疫力の低下を招き、倦怠感や微熱、消化器系の不調を引き起こしているのではないか。
次に、「環境要因」。
部屋の換気不足、日光浴不足は明らかだ。もしかすると、建材や調度品から、アリアの体に合わない何らかの物質(アレルゲンや微量の有害物質)が放散されている可能性もゼロではない。
そして、「心因性要因」。
家庭教師の交代がきっかけになったかもしれない精神的ストレスが、身体症状を悪化させている、あるいは引き起こしている可能性。食欲不振や倦怠感は、精神的な問題から来ることも多い。
恐らく、これらは単一の原因ではなく、複合的に絡み合っているのだろう。栄養不足で体が弱り、免疫力が低下したところに、環境要因や精神的ストレスが加わり、悪循環に陥っている。これまでの治療が効果なかったのは、対症療法に終始し、これらの根本原因にアプローチしていなかったからではないか。
薬や魔法で一時的に症状を抑えようとしても、原因が解決されなければ、すぐにぶり返すか、別の症状が現れるだけだ。
「……原因は見えてきたな」
私は呟いた。治療方針は、これらの複合的な要因を一つ一つ取り除いていくことだ。栄養バランスの取れた食事の提供、生活環境の改善、そして、アリア自身の精神的なケア。時間はかかるだろうが、これが最も合理的で、確実な方法だろう。
私は辺境伯とグレイアムを呼び、私の見立てと治療方針案を説明することにした。彼らがこれを受け入れ、全面的に協力してくれるかどうかが、最初の関門だ。




