第6章4節: アリアとの初対面
グレイアムに案内され、私は館の二階にあるアリアの部屋へと向かった。重厚な扉の前で、侍女らしき女性が心配そうな顔で待っていた。彼女に促され、静かに部屋の中へ入る。
部屋は広く、調度品も上質なものが揃えられているが、カーテンは閉め切られ、薄暗い。空気も少し淀んでいるように感じられる。その部屋の中央に置かれた天蓋付きのベッドに、一人の少女が横たわっていた。
年の頃は確かに十歳ほどだ。長い金髪は艶を失い、顔色は青白く、頬は痩けている。閉じられた瞼は微かに震え、浅く速い呼吸を繰り返していた。明らかに衰弱しているのが見て取れる。
私が近づくと、少女――アリア――はゆっくりと目を開けた。虚ろな、光のない瞳。生気を感じられないその目は、私を一瞥したが、特に何の反応も示さず、再び閉じられようとした。
その瞬間、私の脳裏に、前世の記憶がフラッシュバックした。
病弱で、入退院を繰り返していた末の妹。
ベッドの上で、いつも力なく空を見つめていた、あの諦めたような瞳。アリアの姿が、痛々しいほどに重なって見えた。
「……っ」
思わず、息を呑む。
冷静さを保とうとする私の意識とは別に、胸の奥が、きゅっと締め付けられるような感覚。
非合理的だ。
感傷に浸っている場合ではない。
私は目の前の患者を、客観的に観察し、分析しなければならないのだ。
私は深呼吸一つで感情を抑え込み、アリアに静かに話しかけた。
「アリア嬢、私はハルカ・クラナリだ。君の体調について、少し調べさせてもらいに来た」
私の声に、アリアは再びゆっくりと目を開けた。その瞳には、何の感情も浮かんでいないように見えた。ただ、ほんの僅かに、見慣れぬ訪問者に対する戸惑いのようなものが揺らめいた気がした。
「……好きに、すれば……」
か細い、消え入りそうな声でそう呟くと、アリアは再び目を閉じてしまった。対話を拒絶するような、あるいは、もう何もかも諦めているような、そんな態度だった。
これは、思った以上に根が深いかもしれんな。私は静かにアリアの傍らに立ち、彼女の呼吸、脈拍(手首にそっと触れて確認した)、皮膚の状態などを注意深く観察し始めた。




