第5章9節: 広まる噂とボルガンの提案
私の楽観的な期待は、翌日、見事に打ち砕かれた。
村は、またしても新たな噂で持ちきりになっていた。
「ハルカ様が、キャラバンで仕入れた珍しい食材を使って、天上のご馳走を作られたらしい」
「それを食べたリリアとカイは、あまりの美味しさに腰を抜かしたそうだ」
「なんでも、黄金に輝くご飯や、星のかけらが入ったサラダ(?)もあったとか……」
……カイめ、やはり喋ったな。
いや、リリアも興奮して話してしまったのかもしれない。
あるいは、持ち帰った料理の匂いや見た目から、噂が広まったのか。
いずれにせよ、結果は同じだ。
私の小屋には、昨日以上の数の村人が押しかけてきた。「どうか一口だけでも」「どんなものか見せてほしい」と。私は扉を固く閉ざし、応答しないことでやり過ごしたが、これでは研究に集中できない。
そんな中、ボルガンがやってきた。彼は呆れたような、それでいて少し面白そうな顔で私に言った。
「ハルカ殿、また村を騒がせておるな。いっそのこと、村で食堂でも開いたらどうだ? お主の料理なら、村の名物になるかもしれんぞ」
食堂だと? とんでもない。ただでさえ研究時間が足りないというのに。
「絶対に断ります」
私は即座に、そして冷たく言い放った。
「私の目的は研究であり、料理屋を開くことではない。これ以上の騒ぎは望まない」
「まあ、そう言うな。村の活性化にも繋がると思うのだが……」
「絶対に、いやです、絶対に、です」
私の有無を言わさぬ態度に、ボルガンは肩を竦めた。
「……分かった。だが、このままでは村人たちも収まらんだろう。何か手を打つ必要がありそうだな」
ボルガンの言う通りだ。
この状況を放置しておくわけにはいかない。
しかし、食堂などは論外だ。何か、別の方法を考えなければ。




