第5章2節: キャラバン来訪と執拗な誘い
扉を開けると、リリアが目をキラキラさせて立っていた。その後ろには、やはりカイの姿もある。
「どうしたのだ、騒々しい」
「聞いてよハルカさん! 村にね、すっごく大きなキャラバンが来たんだよ! 遠い国から来たんだって!」
キャラバン?
ああ、隊商のことか。
辺境のこの村に、大規模なものが訪れるのは珍しいのだろう。
「それで、色んな珍しいものを売ってる市場が開かれてるの! 見たこともない布とか、綺麗な石とか、変な形の道具とか! あとね、食べ物も!」
リリアは興奮冷めやらぬ様子でまくし立てる。カイも隣で「うんうん!」と頷いている。
「ほう。それは村にとっては良い刺激になるだろうな」
私は興味なさげに相槌を打つ。市場が開かれようが、珍しいものが売られていようが、私の研究には直接関係ない。早く思考の続きに戻りたい。
「だからね、ハルカさんも一緒に行こうよ! きっと面白いものがあるよ!」
「いや、私は遠慮しておく。研究の途中なのでな」
きっぱりと断ると、リリアはむくれたように頬を膨らませた。
「えーっ、そんなこと言わないで! ちょっとだけ! ちょっとだけだから! ね? ハルカさんの知ってるものもあるかもしれないよ? 研究の参考になるかも!」
リリアは私の腕を取り、ぐいぐいと引っ張ってくる。カイも「行こうよー、ハル姉ちゃん!」と加勢する始末だ。
……面倒だ。実に面倒だ。
だが、この二人を振り払うのは《《さらに面倒だ》》。
それに、「《《研究の参考になるかも》》」という言葉が、ほんの少しだけ私の知的好奇心を刺激したのも事実だ。異世界の物品を観察するのも、広義では調査と言えなくもない。
「……分かった。少しだけだぞ。ほんの少しだけ、付き合ってやる、ほんの少しだからな」
私は大きなため息と共につぶやいた。リリアとカイは、ぱあっと顔を輝かせた。




