第4章8節: 合理的解決策?:教室開催決定
状況を打開するための方法を、私は数日間、思考し続けた。村人たちの要求を完全に無視するのは、現実的ではないだろう。かといって、このまま私が一人で作り続けるのも、私の目的(研究)に反する。
需要があるのなら、供給体制を確立すればいい。しかし、私が工房を開いて生産販売するというのは、あまりにも面倒だし、時間が取られすぎる。
ならば、発想を変えるべきだ。
供給を増やすのではなく、彼ら自身が需要を満たせるようにすればいい。
つまり、彼らに保存食の作り方を教えてしまえばいいのだ。
「そうだ、それが合理的だ」
技術を公開し、彼らが自力で生産できるようにする。そうすれば、彼らは自分の欲しいものを自分で手に入れられるし、私はこの終わりのない施しから解放される。一挙両得ではないか。
私は早速、このアイデアをリリアとボルガンに話してみることにした。
「……保存食の作り方を、村の皆に教える、だと?」
ボルガンは、私の提案に少し驚いたような顔をした。
「ハルカさん、いいの? その……作り方って、秘密なんじゃ……?」
リリアも心配そうに尋ねる。この世界では、特別な技術や知識は秘匿されるのが普通なのかもしれない。
「秘密にする合理的な理由がない。知識は共有されてこそ価値を持つ場合もある。それに、このままでは私の研究時間が確保できないからな。これが最も効率的な解決策だと判断した」
私のあまりにもあっけらかんとした(そして、若干自分本位な)理由に、二人は少し呆気にとられたようだったが、ボルガンはすぐに頷いた。
「……ふむ、面白い。確かに、村の者たちが自分で美味い保存食を作れるようになれば、食料事情も改善するだろう。よかろう、許可しよう。場所の手配などは、こちらで協力する」
こうして、私の発案による「保存食作り教室」の開催が、正式に決定したのだった。これでようやく、私はこのループから抜け出せるはずだ、と、その時の私は期待したのだ。




